ギャンブル好きが考える「女房を質に入れてでも」
香港やマカオでわれている広東語では、「押」の一字が日本で言う「質屋」を意味する。マカオへ向かう道すがら、街中では「押」の字があちこちで見受けられた。昔から「女房を質に入れてでも」という物騒な言い方があるが、ギャンブル好きが考えることは古今東西一緒なのだろう。
香港やマカオの質屋は、ギャンブラーにとってはおそるべき魔窟のような機能を果たしてくれた。もちろん専業の質屋もあるのだが、質屋兼商店の兼業店もある。クレジットカードを使い、翡翠でできた置き物や高級時計を購入したことにする。100万円の買い物をしたとして、店はクレジットカード会社に数%の手数料を取られてしまう。その手数料に加えてさらに店側の手数料を差し引いて、商品のかわりに90何万円かのキャッシュを渡してくれるのだ。つまり、買った商品を瞬間的に質入れしてくれるというわけである。
香港の質屋では、ダイナースとアメックスのクレジットカードを出すとあからさまに嫌な顔をされた。ダイナースとアメックスはやたらと高い手数料を取るからだ。私がクレジットカードを出そうとすると、手数料が安いVISAはないのかとよく聞かれたものだ。
カジノホテルでクレジットカードを使い、いくらかの現金をキャッシングすることはできる。だが、キャッシングはどのクレジットカードでも100万円程度、多くてもせいぜい150万円かそこらだ。これではカジノでの種銭としては少なすぎる。
そこでホテルの外にある質屋兼商店が、事実上のカネ貸し業者として役立った。例えば私が400万円の商品を買ったとしよう。店側は自分たちの手数料を3%乗せて、412万円くらいの伝票を起票する。12万円が店側の純利益となる。
そして、クレジットカード会社の手数料数%を引いた400万円弱の現金が私に手渡される。412万円を回収できるかどうかはクレジットカード会社の問題だから、店側はカネを取りっぱぐれる心配がない。店側にとってはノーリスクのうまい商売なのだろう。
ロレックス10個でつくった軍資金1350万円
今思い返してみると自でも感覚が狂っていたと思うが、質屋を偽装したカネ貸し店に出向き、アメックスのクレジットカードで合計2000万円もの買い物をしたことがある。