災害対策や防衛費の強化、経済・農業政策など、私たちの暮らしに大きく関わる課題について、政府が中心となって日々対応している。しかし、その対応方法について、違和感を抱いている人も少なくないのでは?
ここでは、その違和感の裏側を徹底的に取材した国際ジャーナリスト・堤未果氏の著書『国民の違和感は9割正しい』(PHP新書)より一部を抜粋。政府の災害対策の裏側について紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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災害地震ショックドクトリン――危険な閣議決定はこっそりと
2024年1月17日。
政府が月末に始まる国会に出す、ある法案の中身が公表されました。
その名も、「地方自治法改正案」。
政府が「緊急事態」と判断したら、「閣議決定」1つで、地方自治体から主権を奪い、速やかに国の指揮下に置くというルールです。
都道府県は、国の指示に従わなければならず、方針が決められる際には、必要資料なども出さなければなりません。
今回の地震で、〈初動が遅い〉〈ボランティアに来るなと県が過剰に拒否したことで、被災地に物資が十分届いていない〉〈知事の動きがとても悪い〉など、政府の対応に国民の不満とストレスが最高潮に高まったタイミングを見計らって、出てきたような法改正でした。
本当に緊急時のための法改正なのか
「緊急時に、国の統制力をしっかり強め、行政の混乱を防ぐために改正しました」
知り合いの経営者にこの話をすると、彼はこういいました。
「政府の判断はやむないね。あんなに初動が遅いと、助かるものも助からないんだから。いまだに被災者が体育館に雑魚寝している映像を見ると気の毒でならない。維新にべったりのあの知事は、万博で頭がいっぱいだそうじゃないか。次また他の地域で地震が起きたら、国が指揮をとってすぐ対応できるようにしておくしかないだろう」
本当にそうでしょうか?