さらに国内富裕層のうち、高齢者になった人たちが自身の相続対策のためにマンションを買い求めている。節税効果は今般の税制改正によって一部封じられたものの、現金で課税されるよりも実勢価格の6割程度で評価されるため、マンションは人気の節税商品なのである。
こうした状況は今後も継続する?
ではこうした状況は今後も継続していくのか冷静に考えてみよう。
まずは国内外の投資家の動きだ。日本の金利は世界金融マーケットの中では異常な低金利状態にある。資金調達がたやすくできて金利負担が少ない状態は投資を促す効果がある。ただ日本だけが低金利の一人旅をいつまでも続けることは不可能だ。よく日本は国債を大量に発行しているのでおいそれとは金利を上げられない、所有者も日本人ばかりだから平気だなどという専門家がいるが、金融マーケットは世界中とリンクしている。金利差の拡大は、為替安を誘発し、現に円の対ドルレートは厳しくなるばかり。輸入物価は高騰し、人々の生活を圧迫する。全く調整しないでいる状態を長く続けることは不可能なのだ。
投資家は金利に敏感だ。夫婦ペアローンで買う実需層にとって金利の上昇は痛手だが、投資家は少しでも金利が上昇すると過敏に反応し、将来的に悲観的な観測が行われるとすぐに物件を売却して手じまいする。もちろん一定のキャピタルゲインが得られると確信すればこれも売却へと一斉に行動するのも特徴だ。
物件価格の上昇が止まり、少しでも下落に向かうと、専有床買いしていた中堅以下の不動産業者はあっという間に行き詰まる。買った金額に金利と自社の利益を乗せて売れない限り、彼らは商売にならないどころか、赤字を食らって倒産するところも出るだろう。
マーケットを動かすのは金利だけではない
相続対策はどうだろう。相続財産評価額を下げるのが目的なので、金利上昇などは直接的な関係はないが、物件価格が下がってしまえば、多くの対策では評価額をさらに引き下げるためにローンをつけているため、相続した子や孫がその返済に追われる、売却損を被るなどの阿鼻叫喚状態に陥ることも予想できる。
マーケットを動かすのは金利だけではない。大地震、火山噴火などの天災、戦争やテロ、政治的対立、記憶に新しいパンデミック、リーマンショックのような経済変動などマーケットに甚大な影響を及ぼす要因は枚挙にいとまがない。
こうしたインシデントによってマーケットはころりと違った顔をみせることはこれまでの歴史を振り返るまでもないことだ。場が変われば投資マネーは一斉に手を引く。マーケットに放り出された物件を吟味して買える時代が来るのである。