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 双葉を出た列車は、荒野の中に人家が点在するような平地を走る。人家といっても、実際に住民が生活している家がどのくらいあるのかはわからない。

 次の浪江までが、4年前の常磐線最後の復旧区間である。その先は、途中駅で地元の若者が乗り降りし、日本のどこにでもあるローカル線の平穏な休日らしい雰囲気を漂わせながら、41分遅れをそのまま維持して9時11分に終点の原ノ町に到着した。

原ノ町に到着

2022年から通行規制がなくなった国道6号線。復路は車で南下することに

 列車の内外から震災の爪痕を目の当たりにし、放射線量の影響に若干の緊張を感じつつも、復旧区間の駅周辺の避難指示も解除されて安全に汽車旅が楽しめることを実感できたのは何よりだが、常磐線の線路よりさらに海側には国道6号線が通っていて、より海岸線に近いエリアをドライブすることができる。

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 そこで、原ノ町からいわきへの復路は、列車ではなくレンタカーを自ら運転して、その国道を南下してみることにした。

 常磐線よりも福島第一原発に近い位置を通っている国道6号線は、震災後、放射線量の高さから通行自体が制限された。四輪車が走れるようになっても二輪車や自転車、歩行者の通行規制は続き、自由に通行できるようになったのは令和4(2022)年8月末からである。

国道6号線沿いで見られる帰還困難区域への立入り制限フェンス

「ピーッ!ピーッ!」警戒音に線量計を見ると「1.98」という数字が…

 建前上は常磐線と同じように、通行規制が解除されて平時の国道と変わらないはずだ。そう思って双葉駅の東側から南に向かって自動車を走らせたら、駅から離れてしばらくしたところで、助手席に座っていた同行者が持っている携帯用の線量計がいきなり「ピーッ!ピーッ!」と警戒音を発し始めた。

 空間線量が毎時1.0マイクロシーベルトを超えたときの音で、画面には、電車内や各停車駅で見たのよりはるかに高い「1.98」という数値が表示されている。まもなく、前方に「福島第一原子力発電所」を示す青の案内標識が見えてきた。

福島第一原発への道路標識(国道6号線)

 車内は、突然の線量計の警戒音で急に緊迫した。スイッチをオフにすれば線量計は静かになるが、それは根本的な解決にならない。福島第一原発に最接近しているこの辺りを、少しでも早く通過するしかない。運転中の私は同行者に、「窓を閉めろ!」とやや強い口調で言った。それがどの程度の効果があるのかはわからない。

 幸い、3分ほど走り続けると線量計の数値は急速に低下し、警戒音は鳴りやんだ。だが、短時間ながらも所持人を動揺させたその甲高い音は、「原発事故を忘れるな」という私への警告のようにも思えた。

写真=小牟田哲彦

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