都会に住んでいる人の偏見をさらけ出すと、“村”というのは田舎に行けば行くほど多くなるものだと思っている。村のほとんどは一面の田園地帯か、それとも山奥か。ふだん、“村”に触れる機会がほとんどないのだから、そういうイメージを抱いても無理なかろう。
だから、たとえば北陸。金沢や富山といった大都市は馴染みがあるが、それ以外には小さな村がいくつもあるんじゃないか、などと思ってしまう。平成の大合併で多くの村が姿を消した、などと言われてもピンとこない。北陸の山間集落や広大な田園は、都会人の抱く“村”のイメージにピタリ合う。
ところが、調べてみると北陸三県、すなわち富山・石川・福井の中で、村はたったひとつだけだという。
北陸唯一の村は、富山県中新川郡舟橋村。地図で見ると、富山市街地から東にだいたい9kmくらい。富山平野の真ん中、西側に常願寺川が流れる田園地帯の村らしい。このあたりは、都会に居ながらにして思い描く村のイメージにそぐう。
が、実際にどんな村なのかは、行ってみなければわからない。富山駅からは富山地方鉄道というローカル私鉄に乗って15分。せっかく富山までやってきたのだから、少し足を伸ばして“北陸唯一の村”を歩いてみることにしよう。
北陸地方で“唯一の村”「舟橋村」には何がある?
舟橋村の玄関口は、富山地鉄本線の越中舟橋駅だ。新幹線富山駅のすぐ脇の駅ビルから出ている富山地鉄の電車に乗ると、しばらくは富山の市街地の中を走る。車窓が田園地帯に変わるのは、常願寺川を渡ってから。越中舟橋駅は常願寺川を渡ってからふたつ目の駅だ。
村のターミナルといっても、この駅は実に小さな駅だ。相対式のホームがふたつ。北側には舟橋村の図書館が併設されているものの、改札口に駅員の姿はない。無人駅、というわけだ。