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2018/04/20

猫をテーマにした出版社を立ち上げた

 14年間、雑誌の記者をしていたコ代表自身も猫エッセイストだ。2006年に偶然、保護猫を育てることになり、以来、どっぷり猫に魅せられ、2年前にはまた別の保護猫も迎えた。初めてのエッセイは、取材しながら歩いた街で知り合った猫を巡る話で、2007年に出版した『私は猫に耽溺する』だ。

「行く先々で撮った猫の写真と、その猫たちにご飯をあげる人、救助する人、獣医、里親さんのインタビューなどでまとめました。2000年に入って広がり始めたブログではその頃から猫の人気はあって、今に始まったことではありません。ただ、見えづらかっただけ。

 私の本も1万部ほど売れました。私が本を出してしばらくしてから、2009年頃からか、一人暮らしが増える中で、散歩も必要のない猫の人気が目に見えるようになってきて、大手出版社も猫市場に参入して関連本も増えてきました。でも、どう育てるのかのような実用本ばかりで、もっとたくさん猫と人との関わりについて伝えたい、伝えるべきことがあるのにと歯がゆい思いが積もり積もって(笑)、昨年、猫をテーマにした出版社を一人で立ち上げました」

書店に平積みされた『ヒックの家』 撮影:筆者

 社名の「ヤオン」は韓国語で猫の鳴き声で、「ソガ」は書家。猫に関連する本だけを出版する猫専門出版社だ。『ヒックの家』はヤオンソガ社の第一作だった。

韓国では飼い主のことを「執事」と呼ぶ

 ヒックは済州島でゲストハウスを営む“執事”と共に暮している。韓国では飼い主ではなく執事と呼ぶことが多い。

 犬でも猫でも飼い主どうしは、その名前にママ、パパや母さん、父さんなどの呼称をつけて呼んだりするが、著者は自身を「ヒックのとーちゃん」と名乗っていて、その理由を著書でこう語っている。

「自分一人の身も守っていくのも苛酷な世界でひとり、子猫を育てる母猫を見たら、母親という言葉がとても大事に感じられた。母親という呼び方だけはヒックを生んでくれた本当の母親のために残しておきたかった」(『ヒックの家』)

 ちなみに著者は30代の女性だ。

韓国では温暖な観光地として人気のある済州島 ©iStock.com

 ヒックの趣味は、もっぱら「とーちゃん」を観察することだという。

「とーちゃん」は幼い頃から平凡で、人より一歩後れるタイプ。最初に入った大学は馴染めずに他の大学に入りなおし、なんとか卒業はしたが就職は決まらない。夢はなかった。それでも「済州島で暮してみたい」という思いはあって、旅で知り合った人が住む済州島へリュックひとつで旅に出る。現地のゲストハウスで2年ほどスタッフとして働いた時に出合ったのが「ヒック」だった。