ムカッとは来たが私にとってはよくあることで我慢ができる。ただ、私は車椅子の女性が気になった。車内ミラーで確認してみると、うつむいているように見える。その不用意な発言で、彼女がさらに心苦しい思いでいたらと思うと、やりきれなかった。
怒鳴った男性が降りたあとで、車椅子の彼女が降りるバス停に到着した。私は降車の準備をしながら、彼女にどう声をかけようかと迷っていた。
「さきほどはすみません」と謝るのも、「気にしないでくださいね」と言うのも何か違う気がした。
「お世話になりました。どうもありがとうございます」と言った彼女に、「お気をつけていってらっしゃいませ。またのご乗車をお待ちしています」とだけ伝えた。
「これは無理!」と思ったお客様
一口に車椅子といっても、スポーツタイプのものや電動車椅子など、さまざまだ。重量のある電動車椅子は乗降に苦労することが多い。
ある日、「これは無理!」という乗り物に出会った。80歳はゆうにすぎたであろうおばあさんが乗っていたのは、ハンドル、バックミラー、そして荷物を乗せるカゴまでついたシニアカー(高齢者向けに製造された一人乗りの電動車両)だった。