高級をウリにする老人ホームは「自立型」が多い。入居条件について、70歳以上で、要介護認定を受けていない人、としている施設が大半だ。比較的健康なうちに老人ホームに入居すれば、いざ介護が必要になった時、ホームでそのまま介護が受けられる。クリニックが併設され、医師や看護師が常駐している施設もあり、医療や介護の体制が整っているというのも高級老人ホームの特徴だ。
また、とにかく入居者を飽きさせない工夫が随所にみられる。様々なレクリエーションを用意、旬の食材を一流の料理人が調理していることをウリにした高級レストランを併設、時には施設のホールでクラシックのコンサートが開かれることもあるという。
さらに驚くのは、将来、こうした施設に入ることを決めている富裕層の中には、50代、60代のうちから手付金を支払って、部屋をキープする人までいるという。都心では入居一時金だけで3億円、4億円といった“超”がつくほどの高級老人ホームもある。ある高級老人ホームの担当者によれば、一般的なサラリーマンの入居者はほぼいないという。当然だが、高級をウリにする老人ホームは、これから老後を迎える富裕層をターゲットとしている。そのため施設の調度品からスタッフのマナーまで細心の注意を払い、ホテル以上のサービスを目指していると語った。
陽当たりがよく、テラスからの景色がいい部屋。ちょっとした力仕事が必要になれば、すぐにスタッフが駆けつけてくれる。毎日のように施設内の温泉で寛ぎ、体調に異変があれば、常駐している看護師が即対応をしてくれる。家族や孫など、急な来客があった時はレストランで特別料理まで提供してくれるなど、至れり尽くせりのサービスが受けられるのだ。
トータル金額の試算は不可能
こうした超高級老人ホームは特別だとしても、入居一時金が数千万円という施設は全国的にかなり多い。
「結局、老人ホームの値段なんて誰もわからないんですよ」
そう話すのは、82歳の近藤明さん(仮名)だ。この男性は、かつて何件もの老人ホームを見学し、入居を諦めたという。
「老人ホームは、最終的に総額でいくらかかるのか、明確に金額が示されていることはありません。これまでいろいろなホームを見比べましたが、いいなと思った施設は、だいたい入居金が2000万円前後でした。しかし、この金額だけをみて、高いか安いかの判断はできません。実際に入居した日数によって、退去後に入居金を返金してくれる施設もあります。夫婦で入居する際は2倍の入居金を取る施設もあれば、1.5倍でいいですよという施設もある。また、一般的には入居金が高いほど月額の費用が抑えられているので、どのくらいの期間入居するかによって、金額はぜんぜん違ってくるのです」