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 近藤さんのいうように、トータルでいくらかかるのかは人それぞれだ。では、そのトータル金額を自らで試算することはできるのか。

「できません。トータルの金額を試算するには、自分は何歳で寝たきりになり、何歳で死ぬのかをシミュレーションする作業が必要ですが、そんな不確実なことはわからない。また多くの施設は、介護が必要となった際には介護用の部屋に引っ越しをしなければなりません。入居した当初の自室で死ぬまで介護を受けられる施設はほとんどないのです。途中で引っ越しが必要になれば、月額費用も変わってきます。

※写真はイメージ ©AFLO

 さらに、死ぬのを看取ってくれる施設もあれば、看取りはしないと明記している施設もある。夫婦で入居した場合、自分が先に死んで妻が長生きするというケースも出てくるでしょう。そうなると今度は妻が何歳で寝たきりになり、いつ死ぬのかを考える必要も出てくる。トータル金額を試算するという作業は、こうした暗い話をシミュレーションする作業であるし、不確実な要素をあれこれ考えても意味がないと思うのです」

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景観や食事が期待外れの施設も

 また、近藤さんが老人ホーム探しをしていたときに違和感を覚えたのが、大袈裟な広告やパンフレットだという。

「パンフレットで見たイメージ写真に魅かれて、実際に見学にいくと、全然違うということもよくありました」

 綺麗な建物で眺望もいいと思ったものの、実際に見に行くと老朽化が進んでいたり、眺望がいい部屋は最上階の南側のみで、あとは向かいの建物しか見えないという施設もあったという。特に施設がウリにしていた大浴場が、意外と狭いうえに全体的に薄汚れた感じで、がっかりした経験があると話した。

 高級老人ホームで勤務経験のある職員はこう話す。

「高級感をウリにしている施設は、他と差別化するために、何か大きな特徴を前面に出して入居者を集めています。例えば大浴場、館内のレストラン、医療体制などをウリにしている施設が一般的です。私が以前勤めていた施設も、高級レストランをウリにしていましたが、綺麗なのは店構えだけ。実際に出しているのは、ゴムのような中国産ウナギだったり、冷凍食品だったりと、働いている私たちも酷いなと感じていました。入居者の方は、レストランで提供する料理がおいしくないことに気づいているのだと思いますが、そうしたことは見学者の方にはわからない。見学しても施設の良し悪しは見抜けないので、広告やパンフレットのイメージを鵜呑みにしない方がいいと思います」