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パソコンを置く台がなぜ斜めに傾いている…?

 最後に紹介するのは、パソコンラックの一種である「落とし込みラック」です。コンパクトなスペースにPCやプリンタを効率的に設置できるパソコンラックは今も存在していますが、この落とし込みラックは、天板が後ろ向きに傾斜していることが特徴です。現在では完全に姿を消したこの落とし込みラック、どのようなメリットがあり、そしてなぜ姿を消したのでしょうか。

こちらもサンワサプライのサイトには製品ページが残っています。「チルトラック」という独自の名前がつけられています
https://www.sanwa.co.jp/product/syohin?code=SR-T16
傾いた天板にCRTを斜めに設置する構造。ずり落ちないようストッパーが設けられているのが分かります(画像はサンワサプライのサイトより)

 2000年前後まで、PCのモニタは現在のようなスリムな液晶ではなく、ブラウン管を採用したCRTがほとんどでした。これらは奥行きが数十cmもあるため、手前にせり出すように設置するしかなく、ユーザにとって非常に邪魔な存在でした。また液晶と違って画面の角度や高さの調整がしづらく、圧迫感を感じやすいのも難点でした。

 そこで考え出されたのがこの落とし込みラックです。天板に傾斜をつけることでCRTモニタの後部が天板にめり込むように下がり、画面を見下ろすような自然な角度で見られるようにしたほか、画面とキーボードの距離が近く、視線の動きも最小限で済む利点もあり、主にマニアの間で人気を博しました。

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設置した状態。このようにPC本体はモニタの隣または上などに置くことが前提になっていました(画像はサンワサプライのサイトより)
モニタと十分な距離を取れるのは大きなメリットでした(画像はサンワサプライのサイトより)

 そんな落とし込みラックが姿を消したのは、CRTが液晶へと置き換わったためというのが通説ですが、実際にはそれよりも前、94年に登場したNECの「98MULTi CanBe」や、98年に一世を風靡したAppleの「iMac」など、一体型PCのブームが大きく影響しています。

 これらは一体型ゆえ、落とし込みラックに設置するには本体ごと傾けなくてはならず、そうなるとCD-ROMドライブのトレイまで傾いてしまい、CDが読み取れなくなる問題がありました。これによって落とし込みラックの需要が縮小しつつあった中、2000年前後にCRTから液晶への移行が起こり、トドメを刺されたというのが実情です。

 もっともその後、ノートPCのシェアがデスクトップを上回ったことで、いまではPCラック自体が珍しい存在となるのですから、世の中分からないものです。いずれにしても落とし込みラックを所有していた人は、当時としてもかなりのPCマニアであるだけでなく、落とし込みラックの存在を知っているだけでも、相当な古参といえそうです。