PCまわりのデバイスは、技術の進歩によるモデルチェンジが極めて早いスピードで行われるのが当たり前。しばらく前には普通に使われていたアイテムが、いつの間にか姿を消していることも珍しくありません。
さらに10年や20年といったスパンになると、それがいったい何のために存在した品だったのか、背景から説明しなければ理解してもらえないこともしばしばです。今回はそのような、現在では完全に姿を消したものの、四半世紀前には確かに存在した「前世紀の遺物」3つを集めてみました。
マウスの底に「ボール」が入ってたのを覚えていますか?
まず最初に紹介するのは、マウスの「交換用ボール」です。交換用というのが何を意味するのかという話以前に、マウスとボールがそもそもどう関係しているのか、見当がつかない人もいるかもしれません。
現在のマウスは、光学式センサーを採用した製品がほぼすべてを占めますが、かつてマウスと言えば、底面に直径20mm強のボールが入っており、それをデスク表面に当ててコロコロと転がし、それによって得られた座標の変化で画面上のポインタを移動させていました。
こうしたボールマウスは、2000年前後までは一般的でしたが、イメージセンサーを搭載した光学式マウスと入れ替わるようにして姿を消しました。10代や20代の人であれば、ボール式マウスを使った経験がないばかりでなく、存在すら知らなくても決して不思議ではありません。
ではなぜ、このような交換用ボールが単独で売られていたのでしょうか。これらは表向きは、ホコリが吸着して劣化しやすいマウスボールを取り替えるための品ですが、実際には学校などの共有PCで、イタズラで抜き取られたマウスのボールを補充するために販売されていたというのが実情です。
つまり「マウスのボールが抜き取られて操作できない、なんとかしてくれ」という教育現場からの苦情に対応するため、マウスメーカーが「裏メニュー」として、交換用のボールを単品で取り扱っていたというわけです。
結果的にこうしたメンテナンス性の低さも、光学マウスへの移行を早めた一因になったわけですが、ボールマウスが絶滅した今、交換用のボールは、その背景から説明しなければ存在意義を理解してもらえないサプライ品の典型例といっていいでしょう。