今回は『真田幸村の謀略』を取り上げる。先週に続き、大河ドラマ『真田丸』終了の心の隙間を埋める作品である。
「真田十勇士が幸村に従って大坂城で徳川家康に立ち向かう」という設定は多くの旧作時代劇と変わらないが、物語は最後まで思いも寄らない。
冒頭から、いきなり意外性に富んでいる。宇宙で誕生した巨大隕石が家康(萬屋錦之介)のいる名古屋城上空に襲来、地面に衝突して大爆発を起こすのだ。この後に「とてつもない何かがある」と期待せずにはいられない。
ただ、その「意外性」、本作の場合は必ずしもプラスの意味だけではない。冒頭で大きく期待させておいて、その後しばらくの展開は、肩すかしをくらってしまう。十勇士の人物紹介、大坂と江戸が対立する政治状況、家康の謀略により次々と殺されていく大坂の有力大名……、いずれも既視感がある描写が、あまり緊張感なく続くのである。
その後も、「期待」と「肩すかし」を交互に織り交ぜながら、物語は進んでいく。
たとえば物語半ばの、幸村(松方弘樹)と十勇士が姫(秋野暢子)を救い出す場面。妖術を使う猿飛佐助(あおい輝彦)が巻き起こした大竜巻の中での特撮を駆使した乱闘は迫力十分で、「何か」が始まろうとする予感が漂っていた。
だが、それも長く続かない。家康に裏をかかれ、彼らが動いても何ら事態は動かないどころか悪化していった。
改めて気づかされたのは、十勇士の配役に「本当に勝つ気があるのか」と疑念を抱きたくなることだ。あおい、真田広之、寺田農はいいとして、ガッツ石松や東映京都の大部屋俳優の岩尾正隆や野口貴史といった、最初からあまり活躍が期待できそうにない面々が顔を揃えているのだ。その上、彼らの演じる勇士はことごとく何も特殊能力がなく、酒を飲んで吠えて暴れてばかりの、ただの荒くれ者でしかない。実際に、戦場でまるで役に立っていなかった。成田三樹夫が演じる後藤又兵衛一人で彼ら全員分を凌駕する迫力があり、はるかに戦力になりそうに映っていたほどだ。
だが、本作は最後の最後まで、思いも寄らない。
何かが起きそうで起きない――。そんなモヤモヤを抱えつつ迎える最終盤、彼らはとんでもないことをやってのけるのだ。それは、物語としての大逆転劇であるばかりでなく、歴史そのものを覆す大偉業であった。二時間以上も役立たずだった十勇士たちがそれだけのことをやってのけたからこそ、観劇後に得られるカタルシスは大きくなった。
彼らは何をしたのか。『真田丸』を観た後ならなおのこと、仰天するのではなかろうか。