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 もちろんスタジオですから、ここで世界中の映画が製作されています。編集作業まで行えるので、国内の幅広い映画産業従事者の技術振興にも繋がる。モロッコの映画界にとって、大きな役割を果たしているスタジオです。

キャッシュバック率を20%から30%に引き上げ

──モロッコでは世界中の映画製作者に対してさまざまな支援体制もあるのですよね。

ブフラル大使 はい。行政手続きの簡素化や後方支援のほかに、外国人クルーに対する財政的優遇措置も行っています。

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ラシャド・ブフラル駐日モロッコ王国大使 ©山元茂樹/文藝春秋

 たとえば外国映画製作の撮影費用の補助として、キャッシュバックシステムを導入しています。2012年はモロッコでかかった撮影費用の20%をキャッシュバックしていましたが、2023年にキャッシュバック率を30%に引き上げました。

──それはすごい…。それだけ手厚いサポートがあることで、さらに世界中から映画撮影に人が集まりますね。モロッコ国内では、映画産業はどのような存在ですか?

ブフラル大使 近年はとくに大きく成長しているように思いますね。

 国内で製作する外国映画の予算額でみると、2021年の67億円からわずか1年後の2022年には142億円近くと2倍以上に増加しました。外国映画の製作がモロッコの経済成長にも大きく貢献していることがわかります。

 国内では雇用面での効果も期待し、映画産業に従事できる専門家の育成にも力を入れています。

マラケシュを気に入り、ホテルまで開業したデ・ニーロ

──20年以上にわたって開催されている「マラケシュ国際映画祭」についても教えてください。

ブフラル大使 はい。この映画祭は、国王の提唱により創設されたもので、いまやカンヌ、ヴェネツィア、ベルリンに引けを取らない国際的な映画祭となったと感じています。

 コロナの時期は開催を見合わせていましたが、2023年12月に開催された前回は、35ヵ国から75作品が上映され、2万人以上の観客がマラケシュを訪れました。

 この映画祭は、世界中からビッグネームのスターたちの参加も多いですね。なかでもロバート・デ・ニーロはマラケシュの街を大変気に入って、王宮近くに自身がオーナーを務める「ノブ・ホテル・マラケシュ」を昨年オープンさせたんですよ。

第17回マラケシュ国際映画祭に登場したロバート・デ・ニーロ(2018年)©EPA=時事

──マラケシュは美しい街並みで知られていますが、世界的に有名な格式高いホテルが集まっている印象もあります。映画館もゴージャスな作りのものが多いのでしょうか。