キムタクとほかのメンバー4人の共演はナシ
そして、解散から7年半経った現在まで、木村さんとほかのメンバー4人の共演が一切ないという事実。
『もう明日が待っている』に興味を抱き読んでみようと思うのは、程度の差はあれ、SMAPを好きだった人がほとんどでしょう。ですから一連の解散劇や、その後のメンバーたちの共演の有無は、ある程度知っているはず。
SMAPというグループが、いかにしてさまざまな困難な壁を乗り越え、そのたびに絆が強まっていったかがわかるエピソードが綴られていても、最後に彼らを待ち受ける“結末”を読者全員が知っているので、読み進めるほどに切なく、苦しくなる。
〈みんなが20年間作り続けてきたものが。たった一夜の放送で。破壊された〉(『もう明日が待っている』より)
本書のクライマックスでは、2016年1月18日当日の出来事が時系列に沿って克明に記されています。緊急生放送でなぜ草彅さんが、「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村君が作ってくれて、いま僕らはここに立てています」という言葉を言ったのか、というよりも、なぜ彼が言うことになったのか、言わざるをえなかったのか、その絶望的な真実がわかるのです。
あれほどまでに強い絆があった5人が空中分解してしまうほど、その絆を捻じ曲げて、断ち切ってしまういびつな“力”が存在していたことへの、憤怒や畏怖の念を抱く人も少なくないでしょう。
“絶望感”を共有するための物語
とはいえ、それがこの作品の正しい読後感であり、正しい向き合い方なのかもしれません。この“小説”は、鈴木おさむさんの見てきたことを追体験し、彼を襲った絶望感を少しでも共有するための物語なのではないでしょうか。
ふと1999年に放送された『ドラマスペシャル 古畑任三郎vsSMAP』(フジテレビ系)を思い出しました。SMAPメンバー5人がそれぞれ本人役で犯人グループを演じるという異例のストーリー。
『古畑任三郎vsSMAP』はドラマの構造上、最後は逮捕されることが織り込み済みでありながら、とてもワクワクするエンターテインメント作品となっていました。
『もう明日が待っている』と『古畑任三郎vsSMAP』は、どちらもSMAPにとって悲劇的結末を迎える作品ではありますが、ある意味、対極の物語になっているように思えるのです。