空港に着いて車に乗るシーンでも、最初、僕は彼が後部座席に座るようにしたんだが、『ボブは助手席に乗る』と指摘されたよ。後ろに座ると、運転手とその雇い主みたいになるよね。ずっと庶民の心を忘れなかった彼は、そういうことをしなかったんだ。
衣装やプロダクション・デザインなども含め、すべての面で、僕はボブ・マーリーがやった通りにしようと徹底して心がけた」
銃に撃たれながら平和を訴える
70年代、マーリーの母国ジャマイカは、二大政党の対立で分断状態にあった。マーリー自身も国内の闘争に巻き込まれ、銃で撃たれて怪我をしている。そんな中でミュージシャンとして世界的に注目される存在になったマーリーは、音楽を通して平和へのメッセージを世の中に伝え続けた。
「この映画で、僕は、歌詞に焦点を当てたいと思った。僕自身、ボブ・マーリーの歌を聴いて育ってはいるが、歌詞について考え、その言葉が彼の人生のどんなところから来るものなのかと考えたことはなかった。
彼はなぜ歌の中でそう語ったのか。あの頃のジャマイカはどんな状況で、それらのボブの歌詞は彼のどんな思いから生まれてきたものなのか。歌詞を深く理解することで、ボブの人物像がよりよく見えてくる。
映画の舞台を2年間の時期に絞ったのは、映画は2時間しかないというのももちろんあるが、銃で撃たれるという恐ろしい体験をした後に、20世紀で最高のアルバムと言われる『エクソダス』を作った時期だったからだ。彼は、あのアルバムに、自分の中にある多くのものを盛り込んだんだよ」
5時起床でランニング…アスリートのように、軍人のように
マーリーについてリサーチを重ねていく中では、多くの発見があった。そのひとつは、彼が仕事に対して、常にまじめに、自分に厳しく挑んでいたということだ。