普段何気なく掛けているメガネ。身近なツールである一方で、街で見かけるショップやメガネの専業メーカーがどのようなスタンスで、どのようなビジネスを展開しているかまでは案外知らない人も多いだろう。そこで、今回は“メガネをビジネスする”をテーマに業界の最前線で活躍する経営者に連続インタビューを敢行した。

 第2回は、株式会社メガネスーパー代表取締役社長の星﨑尚彦氏。メガネスーパーは1980年代以降に低価格戦略で急成長を果たすも、新興勢力との価格競争によりシェアを失い債務超過に。どん底だった同社を立て直すべく、メガネ業界外から招聘された。 星﨑氏は三井物産を経て、直近では衣料品販売製造「クレッジ」の再建に辣腕を振るっていた。期待に応えて見事「老舗」のV字回復を実現した星﨑氏の経営哲学とは。

株式会社メガネスーパー・星﨑尚彦社長

これまでメガネとは縁のない生活を送っていました

――メガネ業界はこの10年で大きく変化しました。星﨑さんは、ちょうどその最中にメガネ業界へ来られたことになります。

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星﨑 はい。私がメガネスーパーの社長に就任したのは、今から5年前の2013年7月です。それまでメガネ業界のことはまったく知らなかったですし、個人的にもメガネとは縁のない生活を送っていました。

――そんな星﨑さんが、なぜメガネスーパーの再建を任されたのですか。

星﨑 就任当時のメガネスーパーは大赤字で、本当に明日をも知れぬ状況だったんです。すでに投資ファンド主導による経営再建中だったのですが、私がその同じファンドとともに行なっていたアパレル企業の再生が終わったところで、お声がけをいただいたんです。

 

オッサンばかりの会社は完全に迷走していた

――かつてメガネスーパーは急成長を遂げ、「メガネチェーン御三家」と言われていたこともありました。それがどうして不調に陥ったのでしょうか。

星﨑 もともとメガネスーパーは、価格破壊を引っ提げて業界へ参入しました。以前は個人経営のメガネ屋で10万円近くしていたメガネが4~5万で買えると話題になり、全国に540店舗を構えるまで成長したのです。ところが、JINSやZoff、眼鏡市場などの新興勢力がレンズ代0円を打ち出したことで、当社を含めたこれまでの全国チェーンのオールドプレーヤーは一気に苦境に陥ったわけです。

――価格での競争が難しくなったわけですね。

星﨑 ご存知の通り、JINS、Zoff、OWNDAYSなどのSPA小売り業は、価格のインパクトに加えファッション的な要素も強かったので、我々みたいなオッサンばかりの会社はどうしていいかわからず完全に迷走していました。戦い方がわからないなかで、ならばこちらもさらに価格を下げようと、レンズ代を0円にしてしまった。コスト構造を変えていないのに、売値だけを下げてしまったわけです。

 価格を下げれば利益はその日から下がりますが、客数がその日から増えるわけではありません。非常に危険な戦略であるのに、「レンズを0円にすれば戦える」という現場の声を中途半端に吸い上げてしまい、利益を吐き出してしまったんです。