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「オッサンばかり」のメガネスーパーをV字回復させた経営戦略とは

「メガネをビジネスする」株式会社メガネスーパー・星﨑尚彦社長インタビュー #1

2018/04/24
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“レンズ0円”から脱却し技術力での勝負を決意

――そうしたなか、星﨑さんが来られたと。

星﨑 そうです。このままでは戦えないという状況で、社員と合宿もしながら何度も何度も議論を重ねました。そこで導き出された結論は、「我々はアイケアで差別化を図っていこう。強みである技術力で勝負しよう」ということだったのです。

 というのも、以前メガネスーパーはメガネの専門知識を学べる専門学校を運営しておりました。現在も「アイケアスクール」という名前で復活させていますが、そのため技術力の高い社員が多いんですね。そこを活かし、お客様お一人おひとりに最も適した「アイケア」「アイウェア」をご提供しようと。それが「アイケアカンパニー宣言」です。レンズを有料に戻し、その分検査の内容やアフターケアもより充実したものにして、業界最強の保証システムも導入しました。

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――これまで低価格を売りにしていたなかで、お客様の理解は得られたのでしょうか。

星﨑 そもそも“アイケア”という観点でお客様へアプローチしてこなかったことが、メガネ屋の怠慢だと思っています。

 もともと私は目が良いと言われていたんですよ。数年前に少し見えづらさを感じて眼科へ行っても「あなたの目は悪くないから大丈夫」、「メガネをかけると目を甘やかすことになる」と言われ、メガネなしで乗り切ろうとしていたんです。ところが46歳でメガネスーパーに出会いスタッフに検査してもらったところ、「星﨑社長は大変な老眼です。すぐにメガネをかけないと老眼はさらに進行します」と言われて。メガネを作ったら、散々悩んでいた肩こりや頭痛まで解消されたんです。「なんでこんな大事なことを世の中のメガネ屋は伝えていないんだ!」と。私は怒っているんです。

お洒落なバーでメニューが見えない(笑)

――メガネを必要としている人が、その必要性に気が付くことができていないかもしれないわけですね。

星﨑 ええ。人間なかなか調子が良いときには配慮しないんですが、老眼が始まるぐらいの年齢になると、目の調節力も落ちてきて暗いところで極度に字が見えなくなる。そうなるとお洒落なバーに女性を連れていっても、メニューが見えないんですよ(笑)。それって切実じゃないですか。それは一つの例ですが、初期の段階から老眼鏡をかけることが必要であるというメッセージなど、アイケアの重要性を伝えていくのがメガネスーパーの役割だと思って、社員にゲキを飛ばしています。

 

――アイケアカンパニー宣言をされたあと、社員の反応はいかがでしたか。急な変化に戸惑う方もいたのではないでしょうか。

星﨑 たしかに、改革を行なうとき一番の障壁となるのは社内なんです。当社は2009年からレンズ付きの価格にしていますから、それ以降に入社した社員は「レンズ0円ですよ」というセールストークしかできないわけです。価格で競争するなら、販売員はいらない。人間対人間のやり取りだからこそ、無限の可能性がある。差別化を徹底することで、必ず再生の道はあるということを言い続けました。

社員が「この戦い方で大丈夫だ!」と実感

――それだけ差別化できるという確信があったと。

星﨑 実際に結果が出るまでは、正直私もドキドキしていました。ですが意外とすぐに手ごたえがあり、私が来るまでに2万円を切っていた客単価が、今では3万7000円を超えるようになりました。これまで2万円でも「JINSやZoffに比べて高い」と言われていたのに、今では3万7000円で感謝されるようになったんですよ。

 社員が「この戦い方で大丈夫だ!」と実感してからは、ぐっと調子が上がってきましたね。23億円の赤字だったものが、アイケアカンパニー宣言をした翌年に15億円となり、8億円も改善しているんです。その翌年にまた数億円改善したときに、「もう大丈夫だな」と思いました。2016年には赤字を脱し、今はその自信をより深めています。