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開業した敦賀と“ほんとうの復旧”が必要な路線

 いま、臼井さんは新幹線の延伸開業にともなって職場を敦賀駅に移している。

「私は敦賀の出身なので、家族も友だちも敦賀にたくさんいるんです。みんな新幹線を楽しみにしていたのを間近に見てきましたから、うれしかったですね。

 延伸開業初日はたまたまお休みだったのですが、お客さんとして駅に新幹線を見に行きました。まだまだ敦賀では新幹線になれていないお客さまも多いので、乗り遅れがないかどうかとか、気を使うこともたくさんあります。金沢とは違ってほとんどのお客さまが特急と新幹線を乗り継ぐので……。まだまだ敦賀には、『新幹線がやってきた!』という高揚感がありますね」(臼井さん)

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 新幹線に乗って敦賀駅にやってきたり、また能登半島の玄関口である金沢駅にやってきても、一見するかぎりでは能登半島地震のことなど忘れてしまいそうな活気に満ちている。しかし、まだまだ道は半ばだ。七尾線ものと鉄道も、列車を走らせながらの本格的な復旧工事を並行しなければならない段階だという。

「復旧工事は、ひとまず安全に列車を走らせるようにしただけなんです。だから、いまも徐行運転をしている区間もあります。完全に元に戻してからでは、早期復旧にはならないですから。さらにいくつかの工事をしていきながら、元のように走れる状態にしていく。だから、ほんとうの復旧はもう少し先ということになりますね」(川上さん)

川上耕平さん ©️鼠入昌史

 それでも、1日も早い鉄道の復旧に力を注いだのは、それが復旧・復興に向けた大きな一歩になることを願っているからだ。

「七尾線が走って、本当によかったという声もたくさんいただきました。だから、大きな一歩であってほしいですね。まだ大きな工事も残っていますが、とにかく七尾線、のと鉄道が通っていることで、未来に繋がる。工事に携わったすべての人が、そう願っていると思います」(山田さん)

再び「花嫁のれん」が走り出す日

 七尾線の観光列車「花嫁のれん」の運転再開は、まだまだ見通せる段階ではない。ただ、そうした中でも敦賀駅の臼井さんは再び「花嫁のれん」に乗る日を待ち望む。

「時間はかかると思うんですけど、『花嫁のれん』が復興のシンボルのような感じになったら良いな、と。車内では能登の名産品やお酒を楽しめますし、毎月1回くらい能登の自治体の方が乗ってくれて『楽市楽座』というイベントもやっていたんです。それがとても楽しいイベントで……。能登にはおすすめしたい良いところがいっぱいあるので、そういうお話をお客さまとまた、したいですね」(臼井さん)

 七尾線・のと鉄道が完全に復旧し、「花嫁のれん」が再び走り出す。被災地の置かれた状況を見れば、まだそんな日が見通せる段階ではないのはまちがいない。ただ、少なくとも多くの人が1日も早くそうした日がやってくることを願っているのだ。

のと鉄道・集合写真(JR西日本提供写真)