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「大丈夫でしたか?とお声がけをしたい。でもうかつに聞くことは…」“全線復旧”した能登半島の鉄道が抱える“ほんとうの復旧”までの距離

2024年、能登半島の鉄道#2

2024/05/20

genre : ライフ, , 社会, 歴史

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 これは、復興に向けての大きな一歩になるのだろうか——。

 2024年4月6日、能登半島を走るローカル線・のと鉄道が全線で運転を再開した。能登半島地震当日、つまり1月1日以来約3か月ぶりとなる、全線での運転。すでに、七尾・和倉温泉までのJR七尾線は2月15日までに運転を再開しており、のと鉄道の運転再開によって能登半島の鉄道はすべて復旧したことになる。

七尾線(JR西日本提供写真)

「4月6日には現地に行って列車のお見送りをしました。のと鉄道の社員さんはもちろんですが、県知事も来ていて、復旧に携わった人間として達成感を感じました。復旧してくれてありがとう、という地元の方の声を頂くと、うれしい気持ちになりますね」

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 こう話してくれたのは、のと鉄道和倉温泉~穴水間の復旧工事に携わった、JR西日本金沢工事所の川上耕平さんだ。

 のと鉄道の和倉温泉~穴水間はもともとJR七尾線の一部だった歴史を持ち、現在でも線路などの一部施設はJR西日本が保有している。加えて地震による被害が大きかったこともあって、のと鉄道ではなくJR西日本が復旧工事を担うことになった。

「私たちがのと鉄道の復旧工事をするとなったのが1月の中旬くらいでした。のと鉄道の被災場所は全部で44か所ほどありまして、大きなところでは土砂崩れでレールが埋まってしまっているところもありました。土木構造物の被害でいうと、震度の大きかった北側の方がひどかったですね」(川上さん)

なぜ復旧工事は「簡単な作業ではない」のか

能登半島の路線図。ローカル線ののと鉄道は、被災地の鉄道大動脈ともいえるJR七尾線と浅からぬ関係にある

 復旧工事は言葉でいうほどに簡単な作業ではない。まず正確に被害状況を把握し、一見するだけではわからないような土木構造物の亀裂なども把握しなければならない。雪が降って積もればこうした確認作業もままならない。川上さんら金沢工事所の職員は現地に行って帰ってを繰り返しながら、被災状況の把握に努めた。

「復旧工事に入ってからも、何をもって安全なのかを判断するのが難しい。のと鉄道さんでは基準などもJRと違っていますし、国鉄時代から使われていて老朽化が進んでいる古い構造物も多いですから。橋梁の鉄骨を発注するにも、確実に安全を担保できる基準を満たしていないといけない。それをしっかりと計算して判断してからじゃないと発注ができないんです」(川上さん)

 また、七尾・和倉温泉駅以南のJR七尾線。こちらは特急列車や観光列車も走る、いわば能登半島の鉄道大動脈といっていい存在だ。能登半島の中核都市である七尾市と石川県都の金沢市を結んでおり、七尾線の早期復旧も被災地の復旧にとっては大きな意味を持つ。