「『記憶にございません』は耳にタコができるくらい聞いてきましたけど、『記録にございません』は新鮮な響きがございました」
5月20日、衆議院予算委員会で質疑に立った野田佳彦元首相は、岸田文雄首相の発言を皮肉ってみせた。これまで岸田氏が「聴取記録はないが、関与したという証言は得られなかった」などと説明してきた、森喜朗元首相への電話聴取について追及した一場面だ。
この聴取を巡っては、森元首相がノンフィクション作家・森功氏のインタビューに応じ、電話聴取の中身を証言(「文藝春秋」6月号「森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る 240分」)。森功氏から、「(岸田首相から)『キックバックを知っていたか』、あるいは『裏金システムそのものを作ったのではないか』という質問はなかったのですか」と問われると、「はい」と認めた上でこう答えている。
〈岸田総理からの電話は、「例の問題について、森先生の話を聞いたかどうか、質問が集中しますので、含みおいてください」というような内容です〉〈「ご体調はいかがですか」とか「強いてお目にかかることはありません」というようなことを言われました〉
野田氏はこのインタビュー記事を引き合いに出して、予算委員会で質問したのだ。続けて次のように岸田首相に詰め寄り、再度、森元首相に事情聴取するよう求めた。
「これじゃね、ご機嫌伺いですよ。調査じゃないですよ。これ、天下の『文藝春秋』で言ってますよ。240分間のインタビューですよ。現職と元総理で、こんなに違うようなやりとりは、政治に対する不信感を煽ることになる」