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分数ができない大学生が相当数いることが判明

 今から20年以上前の1999年、経済学者西村和雄たちによる『分数ができない大学生――21世紀の日本が危ない』(東洋経済新報社)が話題となり、学力低下の問題の深刻さに世間の目が向けられることになった。西村たちによれば、小学校の算数の問題も解けない大学生が多いというのであった。

 たとえば、1998年4月の19大学の新入生5000人に対して、数学学力調査が実施された。その結果、分数ができない大学生が相当数いるということが明らかになったのだった。

 その後、数学者芳沢光雄が『「%」がわからない大学生』(光文社新書)において、10年近く前から、さまざまな大学の教員たちから、「比と割合の問題で信じられない間違いをする学生がいて困る」というような声を聞くようになったとしている。芳沢自身も、学生から「『%』って何でしたっけ?」という質問を受けるようになったという。

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仕事現場での混乱を防ぐためには

 大学生なのに小学校で習ったはずの分数や%がわからないなどと聞くと、教育現場の実情を知らない人は耳を疑うかもしれないが、現場をよく知る者にとっては格別驚くことでもない。であれば、就職してくる人物が%をちゃんと理解できていないということも十分あり得るのである。

 そこで、仕事現場での混乱を防ぐためには、何%引きというような抽象的な指示を与えるのではなく、商品ごとに、値引き交渉ではまずはいくら(10%引きの値段)を提案し、どうしてもまとまらずさらなる値引きを求められたらいくら(15%引きの値段)までで粘る、最悪いくら(20%引きの値段)までしか引けない、というように、具体的にいくらという値段で示すようにする必要がある。

 もちろん%についての勉強をさせることも大切だが、それを習得するには時間がかかるので、まずはその場しのぎではあるが、仕事現場をスムーズに動かすには商品ごとに具体的な値段で基準を示すことが欠かせない。