1ページ目から読む
2/4ページ目

「他の人たちは2週間以上前でもわかった時点で都合の悪い日を記入するんですけど、彼女はいつもきっかり2週間前に記入するんです。それは規則通りなんですけど、代わりの勤務者を決めるには早い方がいいので、周囲の人が『もし早めにわかったら、2週間以上前でもすぐに記入してよ』と言うと、『決まり通り2週間前でなんでいけないんですか』って言うらしいんです。

 それで、できるだけ早く言ってもらうと代役を見つけるのが楽だからと言ったら、今度は2週間よりだいぶ前に記入したんですけど、注意書きとして『この日は休むかもしれません』って書いてあるんですよ。かもしれないじゃ困るって言うと、『できるだけ早くって言われたから』って言うらしいんです。もう手に負えませんよって言われてしまって……」

『だれとでもすぐに打ち解けてしゃべれる人当たりの良さとかいう意味でのコミュニケーション力があっても、理屈が通じないという意味ではコミュニケーション力が問題になっている、っていうわけですか』

ADVERTISEMENT

「そうなんです。コミュニケーション力っていうのは、社交性だけじゃ足りないんですね」

15%よりも値引きしてしまう社員

 同席していた別の部署の管理職が、こうしたやり取りを聞いて、会話に加わってきた。

「うちにも理屈が通じないのがいて、ちょっと困ってるんです。販売部門でお客の対応をするんですけど、値引き交渉された場合、最大限20%までは引けるけど、できるだけ10%引きで成立させてほしい、どうしてもとなったときも15%までで粘ってみるように、ということになってるんです」

『最大20%まで引けるけど、できるだけ10%引き、それでうまくいかない場合も、いきなり20%引きまでいかずに15%引きまでで粘るように、っていうことですね』

「そうです。ところが、15%よりも引いてしまうことが、他の人より明らかに多いんです。その都度、15%よりも引いてしまうと、いろんな経費を考えると厳しくなるからもっと粘ってほしいと注意するんですけど、またすぐに15%よりも引いてしまうんです」

『その場合、商品ごとに10%引きだといくら、15%引きだといくら、といった目安はわかってるんですかね?』

「あっ、そこですか。考えてみると、そこは怪しいですね。この前注意したとき、『もちろんはじめは10%引きの値段で交渉したんですけど、なかなか納得してくれなくて、あと1万円引いてくれたら買うからって言われて、1万円なら1割以下だし、まあいいかなって思ったんです』って言うんです。だから、はじめに10%引いてるんだから、そこから1万円引いたら15%以上引いたことになるじゃないかって言ったら、ポカンとしてるんです」