1ページ目から読む
2/3ページ目

「鉄道会社に入ったのに、なんで種を蒔いているんだろう」

 とは言え、当然のことながら東京メトロの社員たちは鉄道のプロでも野菜づくりはズブの素人。事業の立ち上げにはなかなかの苦労があったという。

「そもそも、野菜があまり得意ではなかったですからほとんど触ったこともない。プラントメーカーさんからいろいろ教えていただきながら、本当に手探りではじめた感じでしたね」

どんどん根付いていく

 事業立ち上げ当時をこう振り返るのは、当初からTOKYO SALADに携わってきた高原麗美さん。今でこそ実際の栽培業務はパートさんが中心だが、立ち上げ時は社員4人で種蒔きから収穫まですべての作業をこなしていたという。

ADVERTISEMENT

「鉄道会社に入ったのになんで種を蒔いているんだろうと思いながら(笑)。野菜の味もよくわからないけど、栽培しては食べて味を確かめて、って。でも、やってみると結構面白いんですよ。種はスポンジの上に置くように蒔くんですけど、スポンジの中に何ミリ埋めるかとか、霧吹きをどれくらいするかとか、細かいことひとつひとつで発芽率も見た目も味も変わってくる。作業そのものは簡単でも、こだわりだすとキリがなくて奥が深いんです。手間をかけた分だけ野菜は応えてくれますし」(高原さん)

「細かいことひとつひとつで発芽率も見た目も味も変わってくる」
 

営業は「ネットで西葛西のレストランを検索するところから」

 実際、立ち上げ当初は思うように野菜が育たなかったり、味が薄かったり文字通りの試行錯誤が続いたとか。さらに、その試行錯誤は栽培以外の部分でも。

「東京メトロって輸送というサービスが商品じゃないですか。だから作ったモノを持ってどこかに売りに行くという経験はほとんどないんですよ。だからそもそも営業の方法がわからない(笑)。一番最初はネットで西葛西のレストランを検索して、『まずは電話してみたらいいのかな?』とか、そんな感じでしたから」