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TOKYO SALADの営業スタイル

 東京メトロという大企業のイメージからはちょっと想像つきにくい、まさに手作りの新規事業立ち上げだったのだ。今でこそ当初の苦労が実って栽培は一定のマニュアルに基づいて行われるようになり、販売先もホテルを中心に大きく増えた。事業としては安定しつつあるようだ。

「でも、今でも試行錯誤はありますね。野菜が育ってくると葉っぱが重なって光の当たり方が不充分にになるので、間隔を開けるようにしています。ただ、その間隔を開けすぎると収穫量がどうしても少なくなる。その辺の試行錯誤だったり、あとは新しい品種の栽培実験もありますね」(柴崎さん)

 

 TOKYO SALADは、同社の社員たちが自らホテルなどに足を運んでシェフと話しながら販売する営業スタイル。その中で、シェフから新しい品種や味の要望を受けることもある。

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「例えばレッドマスタードは辛味が特徴なんですが、その辛味の強い弱いとか。技術的な部分は私たちだけではわからないことも多いので、その都度プラントメーカーさんに話を聞いて、研究していきます。新しい品種の要望があればそれも。今ではチンゲンサイなどの栽培を実験しています」(柴崎さん)

実験中のチンゲンサイ

まさに産地直送、地産地消

 シェフの要望などを踏まえ、こうしたフレキシブルな対応ができるのもTOKYO SALADの特徴のひとつだとか。実際、立ち上げ当初に栽培していたサンチュやルッコラなどは既に栽培を辞めており、販売先からの要望で新たに増えた品種も多いという。

「葉っぱを育てるだけならいいんですけど、商品として売る以上は品質が一番。水耕栽培で野菜特有のエグミなども少なくて食べやすいですし、何より衛生的な環境で作っており、安心安全は常に心がけています。また、東京で栽培して近郊に自分たちで運んでいるので、まさに産地直送、地産地消。おかげさまで高く評価していただいていますし、これからも試行錯誤を続けながらおいしい野菜を届けていきたいですね」(高原さん)

 東京メトロの作った野菜「TOKYO SALAD」は、現在はホテルやレストランなどの企業向け。ただ、バジルだけは一部のスーパーマーケットなどに流通しているそうなので、見つけたらぜひ手にとってみてはいかが?

 

写真=鼠入昌史