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治療が早いほど機能障害は抑えられる

 一方、食べ物の通り道にできる咽頭がんは、お酒をたくさん飲む人に多い。実は、咽頭と食道は「扁平上皮」という組織で、境目なくつながっている。食道がんはお酒を飲むと顔が赤くなる人のリスクが高いが、咽頭がんも同じことが言えるのだ。とくに中咽頭がんや下咽頭がんでは、3分の1の人に、食道がんが併発するという。

 したがって、心あたりのある人は、十分に注意してほしい。声がれや喉の痛みがずっと続く場合は、喉頭がんの可能性がある。また、飲み込むときの違和感や痛みが続く場合は、咽頭がんの可能性がある。さらに、口内炎のようなできものがいつまでも治らず、触ると芯を感じる場合や、舌の縁が白または赤くなり、違和感がある場合は、口腔がんの可能性がある。

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 早く治療するほど、発声や飲み込みの機能の障害が小さくすむので、こうした気になる症状があったときは、日本頭頸部外科学会が認定する「頭頸部がん専門医」を受診してほしい。同学会のホームページに、リストが掲載されている(http://www.jshns.umin.jp/)。

 喉頭がんや下咽頭がんでは、がんが進むと手術で喉頭を摘出しなければならず、声をこれまでのようには出せなくなる。したがって、がんの根治をめざしつつ、いかに喉頭を残すかが、これらのがんの治療では、大きな課題の一つだと言えるだろう。

 まず、超早期のがんであれば、ほぼ間違いなく喉頭を残すことができる。かつては放射線治療が主流だったが、近年は内視鏡を中心とした機器の進歩によって、小さな病変が多く見つかるようになり、口から入れる内視鏡で粘膜下層ごと病変部を切除する治療が可能になった。これにより、声や飲み込みの機能の面で、放射線治療よりもさらに後遺症の少ない低侵襲手術も行われている。

 また、早期のがんも、放射線治療単独、あるいは化学療法と放射線治療を併用する「化学放射線療法」によって、かなりの割合で喉頭を残すことができる。喉頭がんの場合、声帯にとどまる1期であれば9割以上、がんが声帯の上下に広がる2期でも8〜9割の人が喉頭を残すことができる。がんが喉頭内に広がった3期でも、半数ぐらいの人が喉頭を残せるという。

 ただし、化学放射線療法にも問題点やリスクがある。喉が荒れたり、肺炎になったりする副作用があるのだ。そのため、高齢者などでは最後まで完遂できない人もいるが、途中でやめると期待した効果が出ない場合がある。また、放射線治療は治療後に唾液が出にくくなったり、頸が固くなって肩こりが続くような状態になったりするので、それも覚悟しなければならない。

 さらに重要なのが、化学放射線療法でがんが再発した場合には、救済手術が必要になることだ。進行しているほど再発のリスクが高まり、結局は喉頭を全摘しなければならないこともある。したがって、化学放射線療法にするかどうか迷うケースでは、「再発した場合には、どのような対処が可能か」を念頭において、専門医と十分に話し合って決めたほうがいいだろう。