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 検討をはじめてから1年半が過ぎた2022年7月、一家はマレーシアに飛び立った。

「日本経済の未来が明るかったら……」

 日本で会社を辞めるとき、同僚から「退職するのはもったいない」と言われた。でも、そうは思わなかった。勤めていた会社は新しいことに挑戦しようとしても上層部の説得に時間がかかり、次から次へと入社してくる優秀な若手が活躍できる場も少なくみえた。

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©Hakase/イメージマート

「マレーシアの経済成長を考えると、給料も増えていく。英語を習得し、海外で色々な経験を積めば自分自身の活躍の場も広がるかもしれない」

 現地の仕事を仲介する日本の転職エージェントに登録し、求人サイトでも仕事を探した。日本でのキャリアを生かそうと応募した通信会社は不採用。最終的にアメリカ企業がマレーシアで運営するコールセンターに就職した。英語と日本語を使って仕事をはじめたばかりだが、年収は前職の半分以下に減る見通しだ。生活費は給料に加えて、都内にあった自宅の売却益や資産運用益などでまかなえる計算だ。

 新しい自宅は2LDK(約90㎡)のコンドミニアム。プールやジム、駐車場がついて毎月の家賃は約8万円と日本の都市部の相場より安い。ただし、学費を除いて考えても、生活費は東京にいた頃と比べて約5万円下がる程度だという。

「野菜や肉は安いですが、牛乳や乳製品はオーストラリアなどからの輸入品が多く、高い。日本の醤油や味噌も日本で買う値段の約1・5~2倍はします。外食もローカルな屋台は1食300~400円で食べられる店もありますが、それ以外はそれなりにする。物価は移住の検討をはじめた2年前と比べると、だいぶ上がりましたね」

 ただ、英語にも徐々に慣れ、学校生活を楽しむ長女の姿には満足している。

「授業は自分が受けたいくらい充実している。宇宙や惑星について学んだときは、学校の先生から話を聞くだけじゃなくて、NASA(米航空宇宙局)の元職員に話を聞いたり博物館に行ったりした。風船を使ってロケットが進む原理も学んだようです。一つのテーマを色々な面から学び、最後は全校生徒の前で発表もして、娘は水星や金星についてわたしたちに英語で話してくれました。娘の関心を育んでくれている教育ですごく満足している」

 移住して驚いたのは、日本人の多さだ。長女が通うインターには、幼稚園~高校で少なくとも約30の日本人家族がいて、同じクラスの子どもも半数ほどは日本人。駐在員の家族が多いが、教育目的で移住した家族もいる。移住後、教育移住を検討する日本人からの依頼でオンライン座談会を開いたこともあり、関心の高さを肌で感じた。