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「もちろん、うれしいです」突然のプロポーズに即答…カナダに移住したから手にできた“同性パートナーとの結婚”

『ルポ 若者流出』より#4

genre : ライフ, 社会, 読書

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 海外に拠点を移し、永住権をとった日本人は過去最高水準に達している。海外で働きたい若者や、子どもに良い教育を受けさせたい親たちが主な層だが、まったく違う理由で移住を選ぶ人もいる。

 ここでは、海外移住を選んだ人々へのインタビューをまとめた『ルポ 若者流出』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。幼少期から自身がゲイであることを隠し続けていた山村健司さん(46歳)が、カナダへ移住して感じた「日本との大きな違い」とは――。(全4回の4回目/最初から読む)

©AFLO

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 広大なオンタリオ湖のほとりにある、カナダの最大都市トロントの市街地は年1回の熱気に満ちていた。高層ビルや煉瓦造りの建物が立ち並ぶメインストリートは、レインボーフラッグを掲げる人々であふれかえっていた。大音量の音楽と歓声が入り交じるなか、色とりどりの衣装に身を包んだドラァグクイーンたちが踊っていた。

 2013年6月。山村健司さんは、トロントで毎年開かれる、性的少数者らの祭典「プライド・パレード」をはじめて訪れた。北米で最大級とされるパレードの盛り上がりは圧巻だった。なにより驚いたのは、ドラァグクイーンたちとともに、小学生くらいの子どもたちが歩いていたことだ。

「日本ではあり得ないですよね。自分の受けてきた教育はなんだったんだろうと思いました。カナダでは子どもの頃からこうした教育を受けてきた人たちが、大人となり、社会の担い手となっているんです」

 ゲイやレズビアン、トランスジェンダーといった性的少数者の子どもを持つ親たちの姿もあった。「自分の子どもを誇りに思う」と書かれたボードを高々と掲げていた。

「日本で暮らす自分の親が、同じようにボードを持っている姿を想像すると、それだけで膝が砕けるような衝撃を感じました」

 もう自分を偽らなくていいんだ。自分が自分として生きていいんだ。そうした思いがあふれ、いつのまにかほおを涙が伝った。