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「もちろん、うれしいです」突然のプロポーズに即答…カナダに移住したから手にできた“同性パートナーとの結婚”

『ルポ 若者流出』より#4

genre : ライフ, 社会, 読書

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 突然のプロポーズに、山村さんの心のなかは喜びであふれた。

「もちろん、うれしいです」

 その場で即答した。

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 内心はパニックになるくらいうれしかったが、昔から感情を押し殺してきただけに、その喜びを素直に表現できなかった。

「僕のいけないところですね。大人になっても自分を隠してしまう。もう少し喜びを表現できたら良かったのですが……」

 2018年12月、2人は法的な関係を認められる「コモンロー」を結んだ。「コモンロー」を選んだのは、日本にいる母親にゲイであることを明かしておらず、そのまま結婚することにためらいを感じたからだ。母親が2人の関係を受け入れてくれるかどうか自信も持てず、「コモンロー」を結んだことも報告はしなかった。

 だが、数カ月後、日本にいる母親からこんなメールがきた。

「お母さんは結婚したのは知りませんでした。いつ彼に会えるの?」

 SNSで新婚生活の様子を投稿してきたことで、母親にも間接的に生活が伝わったようだった。そしてなによりうれしかったのは、母親が「彼」と呼び、その関係を認めてくれたことだった。これまで偽り続けてきた自分を、少しさらけ出せたようにも感じた。

 日本に帰りたい気持ちがないわけではないが、パートナーと生活を続けるならカナダを選ぶ。日本に帰れば母親にも会えるし、食事も美味しい。だが、2人の関係は法律上では他人同士になってしまう。

「日本は恋しいですが、今のままでは無理です」

 日本社会もいずれ性的少数者を受け入れられる社会に変わると信じている。

「日本には相手の立場に立って考え、敬う文化もあるからです。今はまだまわりの目を意識して、なかなか行動に移せない人が多いですが、あっという間に人権先進国に近づける素質があると思います。理解が進めば、ものすごいスピードで広がるはずです」

法的に保証されている安心感

 2023年10日15日、山村さんのパートナーが心筋梗塞で亡くなった。