──なるほど。他には、どんな面白さがありますか。

佐藤 「人間への見方が変わる」ことです。今の戦争や貧困、難民、宗教などの問題は、世界史というフィルター越しに見ると、その多くが「過去の対立や問題」に起因するものなんです。

 これは人間関係も同じ。身の周りの人間模様が、実は世界史の出来事に当てはまることはよくありますよ。

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──具体的にはどんなものがあるでしょう?

佐藤 学校や職場に、仲間はずれにされて孤立した人がいるとします。本当はさみしいのに、外面は「独りぼっちでもいいや」と強がっている。その人が、ちょっと離れた席にいる人に声をかけて、やがてふたりは親密に……こういう風景ってよくありますよね。

 実は、第一次世界大戦で《三国協商》というのがありますが、その時のフランスとロシアの関係はこれなんですよ。

《三国協商》を説明する佐藤さん。「孤立したフランスは、こうやってギター抱えて『♪ロンリ~、僕はロンリ~』って言って、ロシアに『お友だちにならない?』って……」(YouTube『ユーテラ授業チャンネル』より)

──ドイツに孤立させられたフランスが、のちにドイツに同盟を破棄されたロシアに接近?

佐藤 そうです。こう話すとイメージしやすいでしょう? だから、国家関係を擬人化したり、王位の変遷も人間ドラマとして捉えると、世界史はいきなり面白くなります。そして、世界故事や故人に照らし合わせれば「この人、今はすごく上り調子だけど、未来はこうなるんじゃないか……」と予想できる。

──今だと、プーチンの今後とかも?

佐藤 そうです。プーチンは、もし何かしらの革命が起きれば、ロシア革命のニコライ2世のようになるかもしれませんね。そんな類推ができるのも、世界史の魅力だと思います。

世界史は「大好き」か「大嫌い」に激しく分かれるんですよ

──世界史のイメージがちょっと変わりました。実は世界史嫌いで、高校時代は捨て科目でした。

佐藤 高校世界史は不思議な科目で、「大好き」か「大嫌い」に激しく分かれるんですよ。しかも「大嫌い」が圧倒的に多くて、「大好き」は1割くらい(笑)。でもね、生まれたときから世界史嫌いな人はいないんです。みんな、中学高校と進むうちに、嫌になっちゃうんですね。

──その理由は何でしょうか。

佐藤 僕が思うに、まずひとつは「前提となる地理知識の土台がない」こと。小学校、中学校で教わった地理の知識が、身についてないんです。

©文藝春秋

──確かに……「ユーフラテス川ってどこ?」「黄河はわかるけど、長江ってどこ?」と思いました。