佐藤 百年戦争は、途中で国王が代替わりしたり休戦期間があったり、本当はかなり複雑です。でも細かく話し始めたらキリがない。

 だから僕の授業では、こういう出来事も簡単なストーリーにして、大枠から語ります。百年戦争なら「最初の75年はイギリスが勝って、最後の25年でフランスがひっくり返す」。そして「負けたイギリスは戦争責任で内戦になる」「勝ったフランスはいい気になってイタリアに侵入するが、ドイツ皇帝にボコボコにされたあと宗教内戦になり、新しくブルボン朝ができる」。最初の導入はこれぐらい、薄くていいんですよ。

©文藝春秋

──ずいぶんあっさりですね。

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佐藤 代ゼミの授業は受験用ですから、これだけじゃ終わらないです。ただ最初は、歴史を「面白ストーリードラマ」として語るほうがいいと思います。

生徒の気持ちをつかむ「歴史キメ台詞」が大事

──でも、教師としては、詳しく教えたいんじゃないですか?

佐藤 教える側としては、完全に不完全燃焼ですよ。「本当はこれ、違うんだよな」「もうちょっと違う見方や、深掘りができるんだけど」と。でもグッと我慢して、概要だけを面白く話す。それが、ゼロから教わる人には一番効果的だと思うんですよね。

 さらにテクニックを加えるなら、僕はプロ講師として、授業の導入・中盤・ラストには、生徒の気持ちをつかむ「歴史キメ台詞」を必ず入れます。歴史を語るときはメリハリが大事で、「ここでキメて心に刻む!」という勝負所を逃しちゃいけません。

──「今から世界史を勉強したい」という大人は、どうしたらいいでしょう?

佐藤 まずは、YouTubeの『ユーテラ授業チャンネル』で、僕の世界史動画を見てほしいですね。代ゼミ歴30余年のワザを詰めこんでますから(笑)。

佐藤幸夫さん ©文藝春秋 撮影・末永裕樹

 あとは、興味ある国別に「各国史」を読んでいくといいですよ。教科書のような年代順表記の世界史本は、あちこちの地域に飛ぶので混乱しがちですが、各国史はそうならないので。たとえば僕の『マンガで世界史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)を手に取ってもらえれば、世界史の面白さとわかりやすさを実感できると思います。

 マンガの『世界の歴史』も、個別の出来事を楽しく理解するにはいいですね。僕のおすすめは集英社版。絵柄がちょっと地味ですが、頭に入りやすいです。

 いろいろな方法から世界史に興味を持ってもらい、「今自分が生きる世界」が過去とどうつながり、未来にどう広がるのか、ぜひ学んでほしいと強く思っています。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。