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「男に不利だと思うのですが」「女の子が何と言っても…」“諸悪の根源”と呼ばれた名門男子校たちの「予想以上に先進的な性教育」とは《海城、聖光、駒東》

「男に不利だと思うのですが」「女の子が何と言っても…」“諸悪の根源”と呼ばれた名門男子校たちの「予想以上に先進的な性教育」とは《海城、聖光、駒東》

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 2024年の東大合格者数が全国2位の100人となり、注目を浴びた神奈川県の男子進学校「聖光学院」では、産婦人科医の高橋幸子さんによる性教育講座が行われていた。

 冒頭、高橋さんが「性には、生殖の性、快楽の性、暴力・搾取の性の3つの側面があります」と言ったとき、「暴力・搾取の性」というところでどよめきが起きた。少し動揺する高橋さん。「どよめきが起こるの? そうなの? 10年以上やっていて、初めて……。あぁ!」。

聖光学院で高1の男子が受けた性教育講座

 講義が行われたのは、大手芸能事務所が性加害についての記者会見を行って全国的な注目を浴びた数日後だった。男性だって性加害の被害者になることが広く世間に認知された事件であった。

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 電車の中で痴漢に遭ったというような話は、男子校でも数多く報告がある。性に関しては、男性は加害者になりやすいという前提で議論が進みやすいが、男子校の性教育ではそうとは決めつけない配慮がところどころでされていた。

 講座を聴いていた生徒の1人は「性的マイノリティーとか性的同意の話については興味があるのですが、性行為のような直接的な話はちょっと嫌だったので、目を伏せたり、聞き流したりしていました」と感想を述べた。

 男子はエッチな話が聞きたくてしょうがないというのは思い込み。「女に対する妄想と偏見をいっぱい溜め込んでる」男子ばかりではないのだ。

「『学歴高いからあなたが好き』と言われたら…」

 2024年度に東大に44人を送り出した「駒場東邦」の国語科教員である大谷杏子さんは、もともと女子校に勤務していた。出産を経験後、駒場東邦で初めて男子校の教壇に立った。「ここの生徒たちの大学受験での苦しみが異常に大きくて、びっくりしました」とふりかえる。

 生徒とやりとりを重ね考え続けた結果、男子特有のプレッシャーがあることに気づいた。自分たちの弱さや不安を否定するのではなく、むしろ受け入れることで、乗り越えてほしい。「あるべき男性像」のくびきから自由になってほしい。……そう思うようになった。

 中学の3年間を担任としてともに歩んできた学年の、中学校最後の教材として、ジェンダーや性への葛藤をテーマにした小説を選んだ。授業では、学歴に関するジェンダー・バイアスに話題がおよぶ。

「アンケート結果からわかるように、あなたたちは結婚相手に学歴を求めてませんよね。学歴なんて人間の魅力には関係ないじゃんってもし思ってるんだったら、それはそのままあなたたちにもあてはまるはずでしょ。『学歴高いからあなたが好き』と言われたら、『なんだよ、それ』って言えていいはず」