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オフィスから聞こえてきたのは張本課長の怒鳴り声だった。私はその場で聞き耳を立てた。
「せやから、この案件は通せ! これ断わったら、おまえがどうなっても知らんぞ!」
どうやら私の住宅ローン案件について、本部の審査担当と口論をしているようだった。これまで見たことのない姿だった。
次の日の昼、外まわりから戻ると張本課長に呼ばれた。
「おまえの担当したローンの案件、審査、通ったみたいだぞ。運がいいな」
「ありがとうございました」と頭を下げた。
「わかったら、ちゃっちゃと外まわり行きや」
張本課長はいつもの調子でぶっきらぼうに言った。
「ありがとうございました」私はもう一度大きな声でそう言った。
上司との度量を示す人たち
銀行は上下関係が厳しい。とくに当時の取引先課の課長は、今よりずっと威厳があった。若手は口もきいてもらえず、私も名前すら覚えてもらえず、「おい、兄ちゃん」と呼ばれていた。
それでも最後は上司としての度量を示す人たちが大勢いた。張本課長もそんなひとりだった。
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