コーエン兄弟の作品にはシリアスなサスペンスとオフビートなコメディが入り混じったものが多かった。どちらが兄ジョエルの作風で、どちらが弟イーサンの特色なのか。2人が単独で作品を撮り始めてから、それが明らかになってきている。
『ドライブアウェイ・ドールズ』を見ると、『ビッグ・リボウスキ』(98年)や『バーン・アフター・リーディング』(08年)のようなリラックスした作品は、イーサンの色が強いことが分かる。ちょっとシュールで、少しゆるくて、お馬鹿なギャグも満載のロードムービー。
今回はそこに、イーサンの妻で脚本を共同執筆したトリシア・クックの色が加わったのだろう。これまでのコーエン兄弟の映画には見られなかった、クィアでカラフルな女性たちが主人公だ。
車のトランクにはとんでもないものが
もちろん、コーエンらしいノアール風味もある。主人公は車の配送のアルバイトに便乗して、アメリカ縦断のドライブ旅行をしようとしている若いレズビアン女性の2人組。
ところが、手違いで彼女たちに回ってきた車にはトランクにとんでもないものが入っていた。2人はそのトランクに積まれていた「モノ」を追うギャングたちの騒動に巻き込まれることになる。
主人公2人組の内、1人がいい加減でもう1人が堅物というのはよくある組み合わせだが、どちらも同性愛者の女性だと途端に話は新鮮になって、面白くなる。
主人公2人組の内、1人がいい加減でもう1人が堅物というのはよくある組み合わせだが、どちらも同性愛者の女性だと途端に話は新鮮になって、面白くなる。