『君の名前で僕を呼んで』で切ない愛、『ボーンズ アンド オール』でおぞましく異色な愛を描いたルカ・グァダニーノ監督が、『チャレンジャーズ』で斬新な角度からまたもや恋愛映画に挑む。

脚本家は『パスト ライブス/再会』のあの夫本人

 主人公は、ふたりの若い男性とひとりの若い女性。いわゆる三角関係ものだが、強烈な“ブロマンス”であることと、女性がお世辞にも好感度が高いと言えないところが、ほかと大きく違う。

 もうひとつ興味深いことに、脚本を書き下ろしたジャスティン・クリツケスの妻は、今年のオスカーで大健闘した『パスト ライブス/再会』(23年)の監督兼脚本家のセリーヌ・ソンなのだ。

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 韓国に住む幼馴染みの男性とアメリカ人の夫の間でひとりの女性が揺れ動く、あの自伝的映画に出てくる夫が、彼ということ。今度はクリツケスが三角関係を書く番になったわけだが、アイデアが生まれた過程は、妻のそれとはまるで違っていた。

セリーナ・ウィリアムズ VS. 大坂なおみの緊張感

「きっかけは、2018年、テレビをつけたらたまたまUSオープンの決勝戦をやっていたこと。セリーナ・ウィリアムズと大坂なおみの対決で、セリーナがコーチングを受けていたとして審判が警告し、セリーナは『やっていない』と反論した。

ゼンデイヤ演じる女子テニス選手タシ ©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. ©2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

 テニスのファンじゃなかった僕は、そのルールすら知らなかったんだけれども、あの緊迫感あふれる状況に強い興味を持ったんだ。自分はひとりきりでコートにいて、ネットの向こう側には、自分と同じだけこの試合に勝ちたがっている人がいる。

 対戦相手同士がおしゃべりをすることはないが、もし相手に話したいことがあったとしたら? しかも、テニスに関係のないことについてだったらどうなるだろう? それを映画で探索してみたかったんだ」(クリツケス)

セックスの手前で止められた18歳の夜

 12歳の時からの親友でダブルスのパートナーであるアートとパトリックは、18歳で優秀な女子テニス選手タシに出会う。その夜、タシはアートとパトリックの宿泊部屋に来てふたりといちゃつくが、セックスの手前で止め、自分の部屋に帰ってしまった。

10年以上にわたって2人の男を手玉に取り、アート(マイク・フェイスト)と結婚しながらもパトリック(ジョシュ・オコナー)との関係を断たないタシ。悪女のようで純粋ともいえるタシは、3人の関係性にどう決着をつけるのか ©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. ©2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

 翌日、タシはテニスの試合で勝ったほうに自分の電話番号を教えてあげると言い、パトリックが勝つ。だが、アートはタシを諦められない。