『君の名前で僕を呼んで』がアカデミー賞ノミネートを果たし、続く『サスペリア』『ボーンズ アンド オール』で物議を醸したルカ・グァダニーノ監督の新作『チャレンジャーズ』は、またしても問題作だ。
女子テニスの元スター選手(ゼンデイヤ)と、ふたりの男子テニスプレイヤー(ジョシュ・オコナー、マイク・フェイスト)による三角関係のドラマは、なぜ観る人を唖然とさせるのか。
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とにかく尋常でない、あっけにとられる結末
いまのはなんだったのか?
いったいなにが起きたのだろう?
『チャレンジャーズ』が最後に描きだす光景は、予期や想像の及ばぬところへ観る人を放りだす。
どんでん返しのような、展開を思いきりひっくり返すものではないが、とにかく尋常でない、あっけにとられる結末。
なんだ、これは?
ただまあ、落ち着いて考えてみれば、あっけにとられるのは結末だけではない。
『チャレンジャーズ』は劇薬のような映画だ。
全米オープンテニス出場を賭けた元親友同士の決勝戦
ニューヨークのニューロシェルで行われるテニストーナメント“チャレンジャーマッチ”の決勝。
勝てば全米オープンへの出場権を手にできる、この大事な試合で対戦することになったのは、かつて親友同士だったふたりだ。
ひとりは四大大会を次々に制し、グランドスラムの達成まであとわずかとなったところで、スランプに陥ってしまったアート・ドナルドソン。
一方のパトリック・ズワイグはホテル代を捻出できないほど困窮する、ほとんど無名のプレイヤーだが、無遠慮な自信に満ちあふれている。
18歳の青年2人を魅了したゼンデイヤ扮するタシ
アートとパトリックは子どものころからの知り合いで、同じテニスアカデミーでしのぎを削ったルームメイトだった。だが大学進学か、プロ転向かで揺れていた18歳のころ、ふたりはタシ・ダンカンと出会う。