1ページ目から読む
2/3ページ目
驚いたのは性具として、ダッチワイフならぬダッチハズバンド(?)が登場してきたことだ。
男は自分そっくりの等身大ドールとのセックスを女に命じる。オナニーの強制だが、めずらしい。この模擬性行為の模擬窃視の意味するところは…。
部屋のなかで小物入れ(?)かなにか用途不明の男性性器状のモノが一点あるが、小さく白く、まったく汚れがない、これが意味するところは…。
1966年に大ひんしゅくをかった巨大な女性器アート
映画のアイデアは露骨に時代を反映して、まず、1965年に公開されたウイリアム・ワイラー『コレクター』(原作ジョン・ファウルズ)の過激フェミニズムによる読み換えの試み。蝶コレクションが女にとって、クズ男どもの××累々に転じるあたりが快哉のきわみ。
もうひとつ、1966年の個展開催の折、ストックホルム近代美術館の庭に設置されて、大ひんしゅくをかった、フランスの女性美術家、ニキ・ド・サンファルの巨大でカラフルな設置型作品〈ホン(スウェーデン語で“彼女”の意)〉が重要なアイデア源。
女性器を出入り口とし、内部(胎内)にいくつかのイベントルームを配したアート建造物。性解放の先進国スウェーデン開催ならではの万人にひらかれた膣という発想。
その投げやりなまでにだれをも受け入れる巨大女性器は、1世紀前のクールベの〈世界の起源〉(1866年)の閉じた膣をこえて、レオナルド・ダ・ヴィンチがデッサンした人体解剖図の女性器、穴を間違えたかのような無粋な空洞にまでさかのぼる。