映画『風の奏(かなで)の君へ』で、実家の茶葉屋「まなか屋」を継いだ兄とは対照的に、将来の選択に悩む弟・渓哉を杉野遥亮が演じた。 杉野さん自身はどんな人生を選択してきたのだろうか?

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──この役は、どういうふうにオファーをもらったんですか?

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杉野遥亮(以下、杉野) 大谷(健太郎)監督とは以前もテレビドラマでご一緒したことがあったんです。だから、またオファーをいただけたのは嬉しかったです。納得できるまで監督と話し合って、役を作り込んでいきました。

──どのような話し合いがあったのですか?

杉野 監督からは、「この映画は、美作(みまさか)を訪れたピアニスト・青江里香(さとか)と、茶葉屋の真中兄弟をめぐる恋愛物語だ」と言われたんですけど、僕にはそう思えなかったんです。

 確かに、渓哉は里香に惹かれますが、渓哉は里香を通して兄・淳也や、自分の将来を見ていると僕は感じました。だから、「渓哉はここでこんなセリフは言わないのではないか」などと、監督と議論を交わしました。

©杉山秀樹/文藝春秋

──いつもそうやって、人物の心情に寄り添う役作りをしているのですか?

杉野 作品や状況にもよりますが、基本的には「この人は何でこういう気持ちになるんだろう」と考えてお芝居をすることが多いです。

「誰かの言うとおりに生きる」選択をして失敗してきた過去

──そんなふうに杉野さんが心がけるようになったきっかけは、何かあったのでしょうか?

杉野 いろんな俳優さんの演技を見たからだと思います。「この人みたいになりたい」と憧れる俳優さんはみな、自分の意見をしっかり持っています。

「『天空の茶畑』と呼ばれる茶畑の美しさに息をのみ、圧倒されました。この景色を見るためだけでも(美作に)来てよかったと思いましたし、これで“兄貴”をちゃんと尊敬できるって思いました」(杉野遥亮さん) ©2024「⾵の奏の君へ」製作委員会

 それに加えて僕は「誰かの言うとおりに生きる」選択をして失敗してきた過去があるので、もう同じ失敗をするのは嫌だなと思ったのもあります。