今や世界的なスター選手となった、ドジャースの大谷翔平。そんな大谷と一対一で向き合い、インタビューを続けているのが、ベースボールジャーナリストの石田雄太氏だ。大谷は石田氏とのインタビューの中で、どんな言葉を紡ぎ、どんな思いを語っているのか。

 ここでは、石田氏の新著『野球翔年II MLB編2018-2024 大谷翔平 ロングインタビュー』(文藝春秋)より一部を抜粋。2023WBCを目前に控えた2023年2月に実施した単独インタビューを紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

ドジャースの大谷翔平選手 ©文藝春秋

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身体のコンディションや継続的な練習が“閃き”に結びつく

――このオフは、いつものように野球が上手くなる閃きは降ってきましたか。

「そうですね……いろいろ試しながらいろんなことをやりましたね。動きのひとつひとつを、試してみてはダメで、また試してみたらよくて、そういうことの繰り返しです。やっと実戦形式の練習が入ってきて、今度はいくつかの動きを試しながら、それが正しいのかどうか、結果に結びつくのか結びつかないのか。今はそれを確認する期間でもあるので……今日(2月20日)もバッターとしてライブBPに入りましたけど、この先、だんだんそういう機会が増えてくれば、確認する機会も増えてきます」

――今年はピッチクロック(走者がいない場面では15秒以内に投球動作に入らなければならない)やシフト禁止などいくつかの新たなルールができますが、そのために必要なことを意識したオフだったのでしょうか。

「技術的なことは、何もありません。たとえばピッチクロックに関しては、単純にキャッチャーからの返球を捕って(15秒の時間計測が)スタートするものなので、そこからの自分の動作を速くするというより、首を振る回数とか、そういうことの制約がどんどんついてくるものなのかなと思っています。

 僕はサインにけっこう首を振るので、それで投球間隔が長くなるタイプなのかなと思いますけど、自分から(サイン伝達の機器、ピッチコムを使って)送っていいのであれば大幅に時間は短縮できますからね。その分、事前にデータを見たり配球を考えておく作業は増えますし、それを嫌うピッチャーもいますけど、僕はそういうことは嫌いではないので、技術的に何かを変える必要はないと思っています」