1ページ目から読む
3/3ページ目

原題の、笑う女とはなにか?

 このサンファルの膣穴がサイズ・ダウンしてキー・イメージとして映画に投入された。膣穴のドアはギザギザの〈歯〉として女性恐怖のわかりやすいメタファとなった。

 原題の、笑う女とはなにか? そう、笑うヴァギナ、しかも高笑いのヴァギナ。Feminaは、Vaginaと淫(韻)を踏むのである。

 

ADVERTISEMENT

たきもと まこと 1949年京都府生まれ。美術・映画評論家。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業後、平凡出版(現・マガジンハウス)入社。退社後評論活動に。ノワール文化に造詣が深い。主な著書に『映画の乳首、絵画の腓』など。

『男女残酷物語/サソリ決戦』
INTRODUCTION
 55年前(69年)にイタリアで制作されたポップでアヴァンギャルドな作品が近年再評価され日本で初公開される。ロジェ・バディム『バーバレラ』(68年)などの名だたる作品群にも通じるエロティシズムとフェティシズムを漂わせ、サイケデリックな異常世界での終わりなき男女の対決を描く。
 美術面ではフランスの芸術家ニキ・ド・サンファルによる「世界一巨大な娼婦」とも呼ばれた全長は25メートル、重さは約6トンの巨大女性像《ホン》(彼女)のレプリカが使われ、作品に忘れ得ぬ印象を刻んでいる。
 サディスティックな凌辱魔人セイヤー役に『黄金の七人』『愛の嵐』の名優フィリップ・ルロワ。監禁される女性メアリーをマリオ・バーヴァやルチオ・フルチ作品にも出演したドイツの俳優ダグマー・ラッサンダーがクールに熱演している。

STORY
精巧な拷問技術の達人という裏の顔を持つ慈善財団大幹部セイヤーは、ジャーナリストのメアリーを拉致監禁、ハイテク装備満載の秘密のアジトで想像を絶する肉体的、精神的凌辱の限りを尽くす。
 だが、言葉にできない恥辱を受けても微笑むメアリーはセイヤーの想像を遥かに超えていた。しだいに弱音を吐き始めるセイヤー…。いま、洗練と野蛮が表裏一体の性の対決がはじまる。

STAFF & CAST
監督:ピエロ・スキヴァザッパ/出演:フィリップ・ルロワ、ダグマー・ラッサンダー、ロレンツァ・グェッリエリ、バロ・ソレリ/1969年/イタリア/90分/配給:アンプラグド/6月7日公開