財布、タオル、手帳など園内にさまざまな落とし物が落ちているディズニーランド。なかには“扱いに困ったもの”も…。
8年間、ディズニーランドのキャストとして働いた男性が驚いた「ヤバすぎる落とし物」とは? 笠原一郎氏の書籍『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国″にも××××ご指示のとおり掃除します』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
ディズニーランドの「落とし物」
オンステージを歩きまわっているとじつにさまざまなものが落ちている。
財布、タオル、手帳、名刺、靴下、マフラー、手袋、ヘアゴム、バンソウコウ、傘、カギ、キーホルダー、お菓子、錠剤、ペンダント、修学旅行のレジュメ、お土産のリスト……。
カストーディアルキャストは落とし物を拾うと、原則として一番近くにあるアトラクションのキャストに、落ちていた場所を伝えながら、現物を手渡す。また現金が入った財布などの貴重品は「メインストリート・ハウス」まで届ける。これがルールである。
ところが、それが落とし物なのか、捨てた物、あるいは要らない物なのかの見極めはなかなか難しい。
たとえば、なんの変哲もない黒くて細長いヘアピンである。これって落とし物なのだろうか。いや、これは「落ちた物」だろう。
この種のヘアピンはわりとよく落ちていて、最初は扱いに迷った。念のために100円ショップに赴き調べてみると、40本ほど入ったものが売られていた。
常識的に考えて、こうしたヘアピンを落として、遺失物として届け出る人はいないと判断し、私はゴミとして捨てていた。同僚も同じようにしていた。
あるとき、東京ディズニーランドがオープンした初期から働き、ベストセラー本も著している先輩のKさんがこう書いているのを見つけた。
「ヘアピン1個でも届けなければならないんですよ。ディズニーランドならみんな間違いなく届けます」
ええっ、まさかKさん、それって私が捨てていたようなヘアピンじゃないですよね!?
ほかにも、パークのパスポート、カメラのキャップ、イヤリングなど、気づいたゲストが「これ落ちていました」と渡してくれることもよくあった。
ある日、東南アジア系の女性が近づいてきた。手には透明のビニール袋を持っている。
「どうされましたか?」
そう声をかけたが、言葉がわからないのか、あいまいに首をかしげ、そのまま手にしていたビニール袋を私の目の前にかざした。
ビニール袋の口は軽く結ばれていて、なかに黄色がかった液体が入っている。