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「なんで、なんで、なんで……」会社から「営業失格」の烙印を押された銀行マンの悲嘆

『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』より #5

2024/06/17
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「職系コース転換だ。キミには、預金担当課の管理者を目指して頑張ってもらう」

 入行以来、20年も営業畑で働いてきた銀行マン。しかし愛すべき営業人生も、会社の方針で突然の終わりを迎えてしまう。人は大切な拠り所を失ったあと、どう生きればいいのか? 現役行員の目黒冬弥氏による『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記 このたびの件、深くお詫び申しあげます』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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営業人生の終わり

「職系コース転換だ。キミには、預金担当課の管理者を目指して頑張ってもらう」

 堂島支店長から呼び出され、そう告げられた。頭が真っ白になった。

 職系コース転換とは、営業職から事務職へ移ることを示す。預金担当課というのは支店の預金窓口の担当ということだ。事務職は営業成績というわかりやすい物差しがないため、評価されにくい。出世してもせいぜい副支店長どまりで支店長まで昇進することはまずない。明文化された人事ルールがあるわけではないのだが、事務職の者が支店長に昇進した例は私の知る限りたったひとつもない。

 40代前半の私はすでに出世コースから大きく道を逸れていたが、営業職で実績を上げれば、再びそのレーンに舞い戻ることができる。ギラギラした出世欲はすでになくなっていたが、それでも銀行員としてのレースを走っている気分ではいた。

 営業職では、自分自身が納得できるチームを作り、仲間たちと同じ目標に向かって邁進する醍醐味がある。融資先から感謝されたり、ビジネスマッチングした企業から喜ばれたりと、自分の仕事がお客のためになっていると実感できるシーンがある。苦労やプレッシャーもあったが、私は営業職が大好きだった。

 入行以来20年にわたって突き進んできたその営業の道がここで途絶えたのだ。

「なんで、なんで、なんで……」

 考えはまとまらず、ぼんやりとした問いが頭の中をぐるぐると駆けめぐっていた。

 その日は期末日で夕方から打ち上げが行なわれる。いつもなら参加するのだが、一言も口をきくことができず、そのまま帰途についた。

 うちに帰ると妻が驚いた。

「今日、期末の日でしょ? なんでこんなに早く帰ってくるの?」

「転勤になったよ」

 その言葉に妻はさらに驚き、心配そうに尋ねる。

「どこに行くの?」

「事務推進部だって。まず管理者養成研修に参加して、その後はどこかの支店の預金担当課に行くんだそうだ。つまり営業はもう終わり」

 妻はすべてを察したように、それ以上何も言わなかった。