「嫁ぎ先は徳島で、旦那の家は代々、染織を生業にしていたんです。でも、お姑さんがとても厳しくて。それでも20年以上連れ添ったんですけど、数年前とうとう我慢ができなくなって、夫と子どもを置いて、家を出て上京しちゃいました」
そんな彼女が東京での職場にディズニーランドを選んだワケとは? ディズニーランドの表と裏を描いた、笠原一郎氏の書籍『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国”にも☓☓☓☓ご指示のとおり掃除します』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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50代でディズニーキャストになった女性
50代のカストーディアルキャスト・白井さんはおしゃべりが好きで、レストルームのキャスト控え室で一緒になるとひときわ話が盛りあがった。
あるとき、前職の話になり、私がビール会社にいたことなどを伝えると、彼女自身の身の上話を聞かせてくれた。
「嫁ぎ先は徳島で、旦那の家は代々、染織を生業にしていたんです。でも、お姑さんがとても厳しくて。それでも20年以上連れ添ったんですけど、数年前とうとう我慢ができなくなって、夫と子どもを置いて、家を出て上京しちゃいました」
彼女とはよく話していたが、そんな経歴があったとはまったく知らなかった。
突然の告白の内容があまりにも赤裸々だったので驚いてしまった。とはいえ、彼女はいつもどおり悲壮感もなく、淡々と話している。
「それはたいへんだったね」と言うと、「家を出てしまったら、それまでうつうつとしていた気分がぱっと晴れて、ひとりになったのだから、もう好きなことがなんでもできるって切り替わったんです。それでディズニーが好きだったので、ディズニーランドで働けたらいいなと思って」
彼女は20年以上、染織業に従事したあと、一念発起して50代でディズニーキャストになっていたのだ。
「それじゃあ、お子さんは?」
「女の子が2人で、上の子はこっちの大学に入ったので、たまに東京で会っています。子どもとは会いたいと思いますけど、もう徳島の家には帰るつもりはありません」
白井さんはきっぱりとそう言った。
この白井さんばかりではなく、ほかにも同じく50代の女性キャスト・大林さんは、長年連れ添ったご主人が亡くなったことをきっかけに地元の金沢から上京し、キャストになったと言っていた。