二代目旭琉会は多和田真山を会長として、沖縄ヤクザを統一するが、旭琉会富永一家の糸数真に射殺される。この糸数真というヤクザが、私のヤクザ時代の親分でした。
沖縄ヤクザのカリスマと出会う
私がヤクザの世界に入っていくのは、富永一家の糸数真総長に声をかけられたからです。糸数総長は、沖縄でもカリスマ的な人間でした。
一方、山口組は沖縄進出を計っていました。そして沖縄のヤクザを統一した親分の多和田真山は、三代目山口組の田岡一雄を後見人に、山口組系の親分と兄弟分の盃を交わしていた。兄弟分だと、どうしても大きいものに飲み込まれるのです。それで糸数総長は立ち上がる。
山口組の進出を阻止するために、沖縄ヤクザのトップのタマを取った。それが糸数総長です。体を張って本土の進出を食い止め、岐阜刑務所へ行く。懲役16年。だからスターです。刑務所から帰ってきたら、待っているのは出世コース。
糸数真総長は、やっぱり普通のヤクザと違っていました。体を張ってきただけあって、すごい重みがある。男の魅力があるのです。私はヤクザが嫌いだったけれど、イキったりアホっぽいやつらが嫌いだっただけ。そういう魅力ある人に出会うと、感激してリスペクトしてしまう。
なんといっても、糸数総長は山口組の沖縄侵攻を止めた人です。山口組を直接討ったのではなくて、山口組と結託して傀儡政権をつくろうとした多和田真山を襲撃した。
「ヤクザやったら、かなりいいところまでいくけどな」
キューバでいえば、革命の闘士チェ・ゲバラみたいな存在です。アメリカの傀儡政権を革命でバッと倒したのですから、キューバの人たちも盛り上がる。私は、そういうイメージを持っています。
私の仕事が手広くなってきて、金も稼いで目立ってくると、ヤクザとの接点ができて、出会いが生まれます。糸数総長と飲み屋で出会い、名刺をもらったのです。そこから、ちょくちょくご飯を食べに行ったりする関係になります。
糸数総長が、岐阜の刑務所から出てきて2~3年ぐらいのときだったでしょう。私を見ながら、「ヤクザやったら、かなりいいところまでいくけどな」とつぶやいた。スカウトです。この一言で、私はヤクザになった。29歳のときでした。