大阪の「西成」で生まれ育ち、かつて「大阪最強の半グレ」と呼ばれていたサップ西成氏。地下格闘技の選手を経て、地下格大会の運営者となり、現在は格闘技イベント「BREAKING DOWN」への参戦や格闘技大会のプロモートなどに邁進している。

 そんなサップ西成氏が、激動の半生を綴った著書『サップ西成自伝 奪還 「大阪最強の半グレ」と呼ばれた男』(徳間書店)を上梓した。ここでは同書より一部を抜粋し、サップ西成氏が起こした“前田日明襲撃事件”の内幕を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

サップ西成氏(写真=徳間書店提供)

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前田来い、コラッ

 2013年9月8日、予定通り「THE OUTSIDER」が開催された。大阪市中央体育館は満員である。大阪初開催となる「THE OUTSIDER 第27戦」には、後に「BreakingDown」で活躍する朝倉海選手や啓之輔選手、金太郎選手が参加していた。

 第9試合が終了し、前田日明氏がリング上で勝者を讃えていた。それを合図に、私たちは一気に会場内になだれ込む。会場は紛糾したが口々に、

「前田来い、コラッ」

 と、当人に詰め寄る。

 私は前田氏をつかみにかかり、揉み合いになった。間に関係者が入って前田氏は抱えられて控え室に向かう。そこで私はリングサイドに居座って、

「前田を呼んでこい」

 と主張した。ところが、前田氏側が出てくる気配がない。

「俺が1人で行くんやから話をさせろ」

「俺が話をするから」

 と間を取り持ってくれたのがエンセン井上氏である。エンセン氏と一緒に汗をかいてくれたのが、最強のレフェリーと称された和田良覚氏だ。2009年9月13日、私はUFK Mixedウェルター級のベルトを巻いている。そのようなプロのリングでの活動を通じて、和田氏と面識はあった。

「俺が1人で行くんやから話をさせろ」

 と私は主張し続けた。控え室の籠城が1時間くらい続いた頃だろうか。