1ページ目から読む
2/3ページ目

「手を絶対に出すな」

 という条件で、何人かの立ち会いの元で前田氏と対面することになったのである。エンセン氏、和田氏、前田氏のマネージャーなどを伴って1人で控え室に入った。私の覚悟は掛け値なしの命懸けである。

前田日明氏 ©文藝春秋

前田日明から「お前ら、ヤクザだろ」と言われ…

 室内で前田氏は会議テーブルに座っていた。周りに何人かいるが、私は、そのまま机を蹴って、こう言った。

ADVERTISEMENT

「今すぐ俺とサシですんのか、詫び入れるのかどっちや。すぐ決めへんかったら、大会止まったまんま選手に迷惑かかるぞ」

 すると前田氏はこう告げた。

「君たち、クロだろ?」

 クロというのは「暴力団」ということで、「X」が反社と関係していると繰り返し指摘するのだ。

「お前ら、ヤクザだろ」

「いや、全然違いますよ。どこかに面倒見てもらってるわけでも、カネを払ってるわけでもないです」

「でも君たち、クロだろ」

「一切、面倒も見てもらってないし、おカネも払ったりもしていません」

 こんな押し問答をしているうちに、私も落ち着いてきた。そこで、きちんとここに至った経緯も説明した。元々私は言葉が足らないところがあるので、どこまで伝わったかはわからない。だが、前田氏は、

「まあ、サップの言うことはわかった。俺らも誤解してたから悪かった、すまん。また声をかけるわ」

「それやったら帰ります。みんな引き上げます。試合やってください」

 最後は握手までして別れて控え室を出た。

 私は持っていたレコーダーのスイッチをオフにしたが、これで終わりになるはずがない。お互い子供ではないのだ。

 会場には警察が来ていた。運営側が被害届を出すことは確実だった。