大阪の「西成」で生まれ育ち、かつて「大阪最強の半グレ」と呼ばれていたサップ西成氏。地下格闘技の選手を経て、地下格大会の運営者となり、現在は格闘技イベント「BREAKING DOWN」への参戦や格闘技大会のプロモートなどに邁進している。

 そんなサップ西成氏が、激動の半生を綴った著書『サップ西成自伝 奪還 「大阪最強の半グレ」と呼ばれた男』(徳間書店)を上梓した。ここでは同書より一部を抜粋。“前田日明襲撃事件”で逮捕されたサップ西成氏が、「暴力の世界」から離れる決断をした当時の心境を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

サップ西成氏(写真=徳間書店提供)

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「サップ西成」として生きることは「悪」と隣り合わせ

 一連の事件で私には懲役2年執行猶予4年判決が下された。あれだけの大事件で執行猶予が付いた裏側では、私のために尽力し、奮闘してくれた、多くの人たちがいる。

 襲撃事件で「サップ西成」の名前は広がってしまった。問題は、その後も続く人生をどう生きるのかだ。

 悪名は無名に勝るということで、「サップ西成」のブランドの上に乗って生きることはもちろん可能だ。その場合は「悪」と隣り合わせに生きていくことになる。 それは「暴力」と近い場所で生活をするということでもある。

 そうなれば負担を背負って、傷つくのは私ではなく周りの人だ。

 留置場で長期勾留されて思い知らされたことは、

「自分は、周囲の人間を繰り返し傷つけて、生きていくことはできそうにもない」

 ということだった。