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粗暴犯逮捕に数カ月後の背景

 想定通りだが「THE OUTSIDER」は被害届を警察に提出する。自身が汗をかき握手まで持っていったのに、ハッピーエンドとはいかなかったことに対して、情の人、エンセン井上氏の胸中は複雑だったと聞いた。

 捜査に動いたのは「同署によれば」報道でお馴染み、「X狩り」(※編注:「X」はサップ西成氏が運営していた格闘技団体の仮名)の最前線基地である南署である。

 襲撃事件から約3週間後の2013年9月29日、私は引退試合のリングに立った。舞台は「日本統一下剋上 Waru 頂上対決!」と銘打った、「WARU」大阪初上陸の大会である。

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 私の事件は言ってみれば粗暴犯である。捜査にそれほどの時間を要するとは思えない単純な犯罪だ。イメージしていたのは試合前に私を逮捕、拘束して引退試合をできなくすることだった。

 あるいは運営側に働きかけて出場停止にすることも考えられた。

 ところがそうはならずに試合当日を迎える。会場の大阪府立体育会館には警察が来ていて、私の行動を確認しているのにもかかわらずだ。

 待てど暮らせど一向に「逮捕」とはならない。思わず南署に自ら出向いて、

「なんで逮捕されないんですか」

 と直撃しようと思ったくらいである。

 考えられるのは背後関係の捜査だ。やはり警察は「X」や私の後ろ側に反社会的勢力がいることを疑っていたのではないか。そればかりか「THE OUTSIDER」にも同種の存在がいることも疑っていたのではないか。

写真はイメージです ©akiyoko74/イメージマート

警察が時間をかけて入念に調べる理由

 今回の襲撃は「サップ西成個人」の犯行ではなく、背後の組織同士のトラブルと警察は筋読みをした。そうなると警察的には「美味しい」。ところが掘っても出てこない。今度は「ない」ことを裏取りして証明する。

 時間をかけて入念な調べをする理由は、そのくらいしか思いつかなかった。

 結局、事件は警察の思い描いた「美味しいモノ」でもなんでもなく、本当に粗暴な犯行だということにたどり着いた。

 だが長時間かけての調べを通じて私個人について出てきたものはすべて使うはずだ。逮捕までの時間が長いということは、私の勾留期間が長くなることを示していた。