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腕を1本切り落として「3000万円」…沖縄ヤクザの元組長が振り返る“上納金”のヤバい準備方法

『任侠 愚狂に死す 闇社会から光の社会へ』より #3

2024/06/20

genre : ライフ, 社会

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 それがちょっと下手だと、すごい抗争になったり、もっと傷が深くなったりする。そのときに、パッと機転が利いたことを言えるかどうか。これが、場数を踏んでいる人の言い方、やり方、戦略なのです。

 一瞬にして場をつかむ。やっぱり親分になるような人は、そのへんがすごい。

 相手が黙ってしまうようなことをサラッと言っておいて、最後は一人で相手の組に乗り込んで、その若い衆を連れてきたりするわけです。もちろん、若い衆は殺されていない。ボコボコの目には遭っているけれど、自分がヘタ打ったんだからしょうがない。これでトントン、五分五分で終わりにする。

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 ヤクザというのは、格闘技が強いというようなものじゃなくて、そういう斬れる掛け合いの呼吸があるかどうかなのです。

上納金のために腕を落とす

 私の知り合いで、上納金を払えなくて、溜めてしまった者がおりました。そいつは自分の腕を1本落として、上納金3000万円を払いました。本当の話です。

 昔、フィリピンでは、ロレックスとかはめていると、手首が切られる事件があったのです。高級腕時計を奪うために、手首ごと切って持ち逃げするんですね。そのときに手首を切られた人には、保険金が満額出る。いくらいくら出たという話が、日本のそのヤクザにも伝わってきたのです。

©AFLO

 そこで、自分の腕に保険をかけて、フィリピンで腕を1本切り落として、3000万の保険金満額を手に入れて、上納金を払った、というわけです。

 腕一本切り落とした後で、じつは保険がきかないなんてなったら最悪です。でもロレックスごと手首を切られた事件があって、本当に保険が出たよ、いろんな人たちに保険金が下りたよ、というのがわかった。2000万とか3000万、満額近く出てるよと。

 そうなんだ、それいいね、俺も腕に保険かけて切っちゃおうかっていう話。

 手首がなくなっちゃうと満額出るってネタを保険金詐欺に使おうっていう発想です。いま、何が流行ってるか、何が起こってるか、という情報をちゃんと見極めて、これは利用できるなと考える。

 上納金を納めるために、そこまでする。上納金を納めないのは、ヤバいことなんです。

犯罪も計算ずくのプロ

 上納金を納めないとどうなるか。まあ殺されるまではいかないけど、でもやっぱりそこはヤクザですから、絶対金は取ります。

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