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腕を1本切り落として「3000万円」…沖縄ヤクザの元組長が振り返る“上納金”のヤバい準備方法

『任侠 愚狂に死す 闇社会から光の社会へ』より #3

2024/06/20

genre : ライフ, 社会

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 家族とか親戚一同も調べて、親戚一同まで追い込むことはないけれど、でも本人は徹底して追い込まれます。どんなことをしてでも、お金をつくらせようとします。マグロ漁船に乗せるとかもあるし、原発に行かせるとかもあるでしょう。

 ヤクザが金をつくらせるときは、脅しでいくんですけれど、そこもやり方はスマートにいく。殺したら意味ない。金が取れないですから。パッと逃げられても金が取れない。そこらへんをうまくやるわけです。そのさじ加減が上手なのです。

 ヤクザには、これは冤罪だと思う事件がなんとなく鼻でわかります。ヤクザというのは、事件を計算するプロです。金を計算して事件を起こすプロが、ヤクザなのです。

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そこらへんの弁護士より刑法に詳しい

 恥ずかしい事件だけれど、窃盗に入るとします。窃盗で入るときは人がいないときにやれというマニュアルがある。もし家の中に人がいて、押し倒して軽傷にでもなったら強盗になる。強盗というのは初犯でも5年いくのです。

 だけど、人がいないときに入って、お金を盗れば誰も傷つけない。それでパクられたら執行猶予です。全然、刑が違うのです。

 ヤクザは、刑をつねに計算しています。抗争するときでも何をするときでも、つねに刑は計算している。だから、そこらへんの弁護士より刑法は詳しいのです。そうしないと、ヤクザで生き抜けない。

上に行く人、チンピラ止まりの人

 チンピラはなんでチンピラかというと、金に対する態度からそうなるのです。

 チンピラでも協力者ができます。応援するやつができるわけです。それをいいことに、そいつを食ってしまう。金を借りたりして、それで返さない。30万円借りて返さない、50万円借りて返さない。そうすると、相手も嫌になる。関係性が崩れてきます。

 そういうことを、よくやるのがチンピラです。上に行く人たちはそういうことはしない。でもチンピラがそれをやる。協力者を丸ごとガジってしまう。それで、まわりに人がいなくなる。

 自分に対して協力してくれる人たちは、ある意味「資本」です。人的資本。だから、上に行く人たちはちょっとガジる。人間観察力があるから、徹底的に嫌がられないように、ちょっとガジっていく。

 貧すれば鈍するじゃないけれど、チンピラは、金がないからガブッといくわけです。すると、まわりから人が去っていき、よけいに金がなくなる。それでヤケになって傷害事件でも起こせば、チンピラの完成です。

 そしてシノギがないので、クスリに手を出して、自分もいつしかクスリに手を出す。ミイラ取りがミイラになるのがよくあるパターンです。

任俠 愚狂に死す ―闇社会から光の社会へ

任俠 愚狂に死す ―闇社会から光の社会へ

新垣玄龍

さくら舎

2024年6月6日 発売

腕を1本切り落として「3000万円」…沖縄ヤクザの元組長が振り返る“上納金”のヤバい準備方法

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