地震発生時に飼育されていたハチベエとハク
歴代飼育したジンベエザメには名前が付けられていて、定置網がある場所にちなむなどした候補から投票で決めてきた。サザベエ(七尾市佐々波町沖で捕獲)、モモベエ(志賀町百浦沖で捕獲)、オトベエ(七尾市大泊沖で捕獲)、イオリ(七尾市庵(いおり)町沖で捕獲)、トトベエ(10月10日に定置網に迷い込む)、スズベエ(珠洲市沖で捕獲)、ナナベエ(のとじま水族館で7番目の個体)だ。
能登半島地震の発生時に飼育されていたのは8番目と9番目の個体で、ハチベエ(オス)とハク(メス)だった。
ハチベエは2022年8月10日、七尾市庵町の沖で定置網に入った。当時の体長は3.9m。元気いっぱいで、ハクの餌まで食べようとする食いしん坊だった。このためハクが食べ終わるのと同時にハチベエも食事が終わるよう飼育員が工夫していた。名前は「8番目」が由来だ。
ハクは同年8月29日、羽咋(はくい)郡志賀町百浦の沖で定置網に迷い込んだ。当時の体長は4.1m。泳ぎ方が起用で、小回りが利く。ハチベエとぶつかりそうになっても、するりとかわした。名前は郡名からつけた。
今年の夏か来年の夏には海に戻る予定だった
2頭のうち、先に弱ったのは食いしん坊のハチベエだった。
南方系の魚だけに、ジンベエ館の水温は25度に保たれていた。ところが、水の濾過装置が壊れたうえ、水漏れも発生した。一時は水位が半分以下になった。体の大きなジンベエザメは生きていけない。
急いで海水を注入したが、前述したように冬の能登の海は10度程度しかない。水温が下がりすぎただけでなく、濾過装置の故障で水が白く濁った。
次第に弱り、1月9日に死んだ。
ハクは追いかけるようにして翌1月10日に命を落とした。
「2頭とも体長が5m近くになっていたので、この夏か来年の夏には海に戻る予定でした。それなのに……」。高橋係長は言葉少なだ。
他にも、多くの生き物が生き延びられず、のとじま水族館では計約40種・約5000匹もの生物が死んでいく。
撮影 葉上太郎
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